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脂質異常症を改善するための運動

脂質異常症治療の基本は運動療法と食事療法の生活習慣の改善と薬物治療があります。運動療法として、運動の頻度はできれば毎日、少なくとも週3日以上、運動量は30分以上、強度は最大酸素摂取量の約50%の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により血中脂質の改善効果が得られ、脂質異常症を改善します。

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国内の脂質異常症(血中のLDLコレステロール値が140mg/dL以上・HDLコレステロール値が40mg/dL未満・トリグリセライド(中性脂肪)値が150mg/dL以上)の有病者の割合は、成人で20%以上にも及ぶといわれております。脂質異常症治療の基本は生活習慣の改善と薬物治療がありますが、冠動脈疾患を合併しない場合には食事療法と運動療法に重点を置いた生活習慣改善を最初に行い、次のステップとして薬物療法との併用療法を行うとされています。
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患診療ガイドラインによると、脂質異常症のための生活習慣の改善項目は、「1. 減量:適正体重の維持(BMI18.5-24.9kg/m2の範囲)」「2. 減塩:食塩摂取の制限(7g/日以下)」「3. アルコール摂取の制限」「4. コレステロールや飽和脂肪酸の摂取制限」「5. 運動療法(運動・身体活動量の増加)」「6. 禁煙」とされています[1]

運動療法は、脂質異常症患者だけでなく健常者においても、血中トリグリセライドレベルを低下、HDLコレステロールレベルを増大させ、血中脂質値に好影響を及ぼします。動脈硬化性疾患診療ガイドラインでは、以下のような運動種目・時間・強度・頻度の運動療法を推奨しています[1]

運動種目
ウォーキング(速歩)・ジョギング・水泳・自転車・社交ダンスなどの有酸素運動。
運動時間・頻度
運動はできれば毎日、1日30-60分間、あるいは1週間で合計180分以上の運動。
運動強度
最大酸素摂取量の50%程度、中等度「ややきつい」と感じる程度であり、心拍数が安静時の1.5倍程度(100-120拍/分)の運動強度。

血中脂質レベルは一回の運動では影響を受けません。そのため血中脂質レベルに好影響を与えるには数ヶ月以上の長期的な療法が必要となります。

有酸素運動が血中脂質レベルを改善させる機序として、筋のリポプロテインリパーゼ活性が増大し、トリアシルグリセロール(血中カイロミクロン・VLDL・LDL)の分解を促進させることにより、HDLを増やすことが関与していると考えられています。 HDLは「善玉コレステロール」として知られていますが、末梢組織や細胞から余剰なコレステロールを回収し、肝臓に運搬する役割を有しています。つまりHDLコレステロールは脂質異常症の進展を抑制する働きがあります。
2005年までの国内外の運動に対するHDLコレステロールの効果を検討した研究結果から、HDLコレステロールを増加させることができる運動・身体活動の最低条件として、1週間に合計120分間の運動を行うか1週間に合計900kcalのエネルギーを消費する身体活動を行なわなければならないことも明らかとなりました。

運動を実施する上での注意点としては、準備・整理運動を十分に行うこと、メディカルチェックを受けて狭心症や心筋梗塞などの心血管合併症の有無を確認し、運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を設定する必要があります。脂質異常症の改善には運動療法だけでなく、食塩摂取量やアルコール摂取量の制限、禁煙などとの併用療法がより効果的といえます。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会.
    動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版.
    2007.