高血圧治療の基本は生活習慣の修正(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。
「平成29年国民健康・栄養調査」の結果において、収縮期血圧140mmHg以上の割合は、男性で37.0%、女性で27.8%であり、約4,086万人が該当することが示されています[1]。この高血圧症の要因としては、好ましくない食生活・身体活動量の不足・喫煙・ストレスといった生活習慣が密接に関連しています。高血圧治療の基本は生活習慣の修正と降圧薬治療ですが、高血圧症の発症や予防には習慣的な運動や身体活動の増加が有用であることは多くの研究により証明されています[2]。また、治療や予防に推奨されている運動療法に関するガイドラインも確立されてきました。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、降圧治療には、生活習慣の修正、降圧薬治療があげられています。生活習慣の修正は、1)食塩摂取量の制限、2)野菜や果物の摂取の促進、3)飽和脂肪酸や総脂肪摂取量の制限、4)体重減少(肥満の場合)、5)運動・身体活動量の増加、6)アルコール摂取量の制限、7)禁煙(受動喫煙の防止も含む)とされています[3]。
運動療法は血管内皮機能を改善し、降圧効果が得られ、高血圧症を改善するといわれています。また習慣的な有酸素運動が収縮期血圧を3.5mmHg低下、拡張期血圧を2.5mmHg低下させ、高血圧患者においても収縮期血圧を8.3mmHg低下、拡張期血圧を5.2mmHg低下させる効果があるといわれています。また、身体活動が約5メッツの強度で2〜12回/月、0.5〜2時間/週の実施で収縮期血圧が低下するという報告もあります。運動療法には以下のような運動種目・時間・強度・頻度が一般的に推奨されています[3]。
さらに運動療法は、1週間あたりの総運動時間あるいは総消費カロリーで設定することが適当であるといわれています。例えば1回の運動時間を長く設定し1週間の運動回数を減らすか、運動強度を低く設定し1週間の運動回数を増やすなどの設定を個人に合わせて考えることができます。
運動を実施する上での注意点としては、準備・整理運動は十分に行うこと、メディカルチェックを受けて虚血性心疾患・心不全などの心血管合併症がないことを確認し、運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を設定する必要があります。また高血圧症の改善には運動療法だけでなく、食塩摂取量やアルコール摂取量の制限、禁煙などとの複合的な療法がより効果的といえます。
(最終更新日:2019年6月4日)