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運動プログラム作成のための原理原則 -安全で効果的な運動を行うために

効果的な運動プログラムを作成するためには、トレーニングの原理原則に従うことが大切です。また健康づくりのための運動プログラム作成の際には安全性を最重視する必要があります。その際は個人の潜在的なリスクや体力水準、体組成などの評価が重要となります。

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運動を習慣的に行うと心血管系や呼吸器系の機能を高めることができ、生活習慣病を予防することができます。しかし運動は諸刃の剣といわれるように、やりすぎると腰痛などの関節痛を起こしたり、あるいは循環器系の合併症を引き起こしたりする可能性もあります。運動は闇雲にただやればよいのではなく、安全で効果的に行うためにはいくつかの決まり事があります。

3つのトレーニングの原理

  1. 「過負荷の原理」
    ある程度の負荷を身体に与えないと運動の効果は得られないということです。その強度の最低ラインは、日常生活の中で発揮する力以上の負荷です。ただし、低体力者や高齢者が筋力や筋量の維持を目的とする場合は、この原則に必ずしも従う必要はありません。
  2. 「特異性の原理」
    運動中のエネルギーの使われ方や筋肉の活動の仕方と関係する能力が増加することです。わかりやすくいうと、短距離走のトレーニングをすれば短距離は速くなりますが長距離は速くなりませんし、脚のトレーニングをすれば脚のパフォーマンスは高まりますが腕のパフォーマンスは向上しないということです。
  3. 「可逆性の原理」
    せっかく獲得した効果もトレーニングを中止すると失われてしまうことです。

6つのトレーニングの原則

  1. 「意識性の原則」
    トレーニングの内容・目的・意義をよく理解し、積極的に取り組むことです。トレーニングの目的は何か、プライオリティは何かを意識して取り組むことが重要です。
  2. 「全面性の原則」
    有酸素能力・筋力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることです。筋力トレーニングについていえば、全身の筋をバランスよく鍛えること、大筋群を優先して実施することなどです。
  3. 「専門性の原則」
    競技や健康づくりなど目的にあった機能(筋力・筋パワー・筋持久力・有酸素能力・柔軟性など)を優先的に高めていくことです。健康づくりでは有酸素運動と大筋群の筋力トレーニング・ストレッチング、競技種目ではその運動で使われる筋群を実際の活動様式(スピードが必要なのか持久力が必要なのか)に合わせて行います。
  4. 「個別性の原則」
    トレーニングの実施内容を個人の能力に合わせて決めるようにします。これは効果を得るばかりでなく、安全のためにも極めて重要なことで、ひとりひとりの能力を細かく見極める必要があります。
  5. 「漸進性の原則」
    体力・競技力の向上に伴って、運動の強さ・量・技術課題を次第に高めていくことです。いつまでも同じ強度の繰り返しではそれ以上の向上は望めません。定期的なプログラムの再検討が重要になります。
  6. 「反復性・周期性の原則」
    運動プログラムは、ある程度の期間、規則的に繰り返すようにします。繰り返し行うことは、テクニックを上げるための重要な要素です。周期性の原則は、1年間を通したトレーニング計画を行うことです。どの時期が最も効果的かを考えてプログラムを作成します。

また疾病の改善や健康づくりのための運動プログラム作成に関しては、特別に運動処方という言い方をします。安全で効果的な運動処方を行うためには、運動前の問診やメディカルチェック・体力測定を実施し、個人の潜在的なリスクや体力水準、体組成などを評価する必要があります。また運動中は定期的な強度の監視、運動後はトレーニング効果の再検査が重要です。特にプログラムの作成にあたっては個人の特性を考慮し、各国で定められている運動処方の指針に従い、科学的に裏付けられたプログラムの作成が望まれます。

(最終更新日:2022年12月06日)

真田 樹義

真田 樹義 さなだ きよし

立命館大学 スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 教授

1988年鹿屋体育大学体育学部体育スポーツ課程卒業。2005年東京都立大学大学院博士課程 修了。博士(理学)、健康運動指導士、ACSMヘルスフィットネススペシャリスト、ヘルスケア・トレーナー。早稲田大学生命医療工学研究所講師、国立健康・栄養研究所客員研究員、早稲田大学生命医療工学研究所准教授、立命館大学理工学部准教授、同スポーツ健康科学部スポーツ健康科学研究科准教授などを経て、2011年より現職。専門は運動処方、運動生理学。