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進んでいる世界の受動喫煙対策

世界では「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に示されているように、受動喫煙の健康被害は明白なものとして、分煙ではなく全面禁煙化が進んでいます。

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1990年代以降、アメリカのカリフォルニア州やニューヨーク州などでは、一般の職場はもちろんレストランやバーも全面禁煙とする動きが始まりました。そしてアイルランドで2004年に世界で初めて国全体を全面禁煙とする法律が施行され、同年のニュージーランド、その後もウルグアイ(2006年)・イギリス(2007年)・香港・トルコ(2009年)、そしてアメリカでも半数以上の州で屋内を全面禁煙とする法律が成立しています。喫煙する利用者の利便性よりも、飲食店等で働いている人を受動喫煙から保護することの方が重要だからです。屋内全面禁煙となっている国は、2020年時点で67カ国となり、途上国を含む世界各国に広がっています。国・州によっては、子どもが乗っている自家用車内までもが規制の対象になっています[1]

たばこの煙のない環境-最高レベルの国と地域 2020年時点([1] p.65より転載)

たばこの煙のない環境-最高レベルの国と地域 2020年時点

最高レベルに達した国、地域:アフガニスタン、アルバニア、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、オーストラリア、バルバドス、ベニン、ボリビア*、ブラジル、ブルネイ、ブルガリア、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、カナダ、チャド、チリ、コロンビア、コンゴ、コスタリカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エチオピア*、ガンビア、ギリシャ、グアテマラ、ギアナ、ホンジュラス、イラン、アイルランド、ジャマイカ、ヨルダン*、ラオス、レバノン、リビア、マダガスカル、マルタ、マーシャル諸島、ナミビア、ナウル、ネパール、ニュージーランド、ニウエ、北マケドニア、ノルウェー、パレスチナ占領区、パキスタン、パナマ、パプアニューギニア、パラグアイ*、ペルー、ルーマニア、 ロシア、セントルシア*、セーシェル、スペイン、スリナム、タジキスタン、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、ウガンダ、イギリス、ウルグアイ、ベネズエラ
*:2018年12月31日以降新たに達成した国

これらの国・州では、法律で公共空間での喫煙を規制しており、違反者への罰金はもちろん違反を容認した施設にも罰金と営業停止処分などの罰則が定められています。

こうした流れの背景のひとつには、やはり国際条約「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(たばこ規制枠組条約)」の存在があります。たばこ規制枠組条約第8条2項では、「締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。」と定められています[2]

一方で日本でも、2020年4月に改正健康増進法が全面施行され、公共施設や公共交通機関は原則屋内禁煙となりましたが、残念ながら100%ではありません。
2020年に実施された厚生労働省の一般の職場に関する調査では、事業所の18.8%が屋内禁煙ではなく、分煙(屋内に喫煙専用室等を設置)との回答でした[3]。法改正以前から営業を続けている小規模飲食店に対する経過措置もあり、上述の「最高レベルの国と地域」のような全面禁煙・完全禁煙の屋内環境は実現できていません。

改正法では施行後5年で見直しが検討される規定が設けられています。たばこの煙から健康を守るため、受動喫煙を防止するための法的措置を強化し、対策の実施を促進することが求められています。

(最終更新日:2021年11月18日)

中村 正和

中村 正和 なかむら まさかず

公益社団法人 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長

1980年自治医科大学卒業。労働衛生コンサルタント、日本公衆衛生学会認定専門家、厚生科学審議会専門委員、日本学術会議連携会員。専門は予防医学、健康教育、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策とNCD(生活習慣病)対策。厚労科研研究班代表者として、たばこ政策研究に従事。研究成果をもとに禁煙治療の保険適用、たばこ価格政策、健康日本21における喫煙の数値目標の設定、特定健診における禁煙支援の強化等の政策実現に貢献。

平野 公康

平野 公康 ひらの ともやす

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 たばこ政策情報室長

1994年東京大学理学部生物学科卒業。専門はたばこ政策。研究テーマはたばこ煙の健康影響評価、喫煙室・喫煙所からの煙流出の評価、たばこの広告・販促・後援活動の影響。厚生労働省健康局健康課たばこ対策専門官、健康局参与(たばこ対策)として、健康増進法改正やたばこ規制枠組条約の日本国政府窓口業務に従事。望まない受動喫煙を防ぐ法律の施行やたばこ規制枠組条約の履行推進等の政策実現に貢献。

参考文献

  1. WHO
    WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2021
    https://www.who.int/teams/health-promotion/tobacco-control/global-tobacco-report-2021
  2. 外務省
    WHO たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約 訳文
    2004.
  3. 厚生労働省
    令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況、事業所調査
    2020.  https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r02-46-50b.html