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たばこの煙と受動喫煙

たばこの煙には、喫煙者が吸う「主流煙」、喫煙者が吐き出した「呼出煙」、たばこから立ち上る「副流煙」があり、受動喫煙では呼出煙と副流煙が混ざった煙にさらされることになります。煙に含まれる発がん性物質などの有害成分は、主流煙より副流煙に多く含まれるものがあり、マナーという考え方だけでは解決できない健康問題です。

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受動喫煙とは

たばこの煙のうち、フィルターなど吸い口から喫煙者が吸い込む煙を「主流煙」といい、喫煙者が吸って吐き出した煙を「呼出煙」といいます。また、火がついた部分から立ち上る煙のことを「副流煙」といいます。空気中には、呼出煙と副流煙が混ざって漂うことになりますが、そういう煙を「環境たばこ煙」と呼んでいます。そしてそれにさらされることを「受動喫煙」といいます。

受動喫煙とは、文字通り「受け身」の「喫煙」です。自分が燃焼や加熱することによりたばこから煙を発生させるのではなく、他人のたばこの煙にさらされてしまうことが「受動喫煙」です。改正健康増進法第28条では「人が他人の喫煙によりたばこから発生した煙にさらされることをいう。」と定義されています。

受動喫煙の健康被害については「受動喫煙 – 他人の喫煙の影響」にまとめてありますが、そもそも「煙」とはどのようなものなのでしょうか。

たばこの煙に含まれる成分

たばこの煙は粒子成分とガス成分の2種類に大別されます。紙巻たばこの煙では、粒子成分には4,300種類、ガス成分には1,000種類もの化学物質が含まれ、そのうちにいくつかは粒子成分とガス成分の両方に含まれると報告されています。たばこの煙に含まれる成分は、たばこの葉そのものに含まれるものと、乾燥や加⼯・製造の過程で⽣成・添加されたもの、さらに、それらが燃焼する際に⽣成されるもので構成されており、喫煙や受動喫煙ではこれらが合わさったものをまとめて吸い込んでいることになります。

表. たばこ1 本に含まれる化学物質の重量主流煙及び副流煙の比率[1]

成分

副流煙/主流煙比*

一酸化炭素

3.4-21.4

ニコチン

2.8-19.6

タール 

1.2-10.1

カルボニル類

ホルムアルデヒド

6.2-121.4

アセトアルデヒド

2.2-14.4

アセトン

2.5-11.5

アクロレイン

4.3-29.0

プロピオンアルデヒド

2.4-14.6

クロトンアルデヒド

3.7-20.8

メチルエチルケトン

2.3-14.3

ブチルアルデヒド

2.3-8.6

窒素酸化物

一酸化窒素

15.8-61.3

窒素化合物

16.3-64.6

アンモニア

294.2-2,565.5

揮発性有機化合物

1,3-ブタジエン

6.3-43.0

イソプレン

6.0-37.4

アクリロニトリル

10.5-88.6

ベンゼン

8.2-42.0

トルエン

10.9-68.8

ベンゾ[a]ピレン

7.6-48.8

 たばこ特異的ニトロソアミン類

NNN : N -ニトロソノルニコチン

0.8-3.7

NAT : N -ニトロソアナタビン

0.4-1.9

NAB : N-ニトロソアナバシン

0.7-1.6

NNK : 4-(メチルニトロソアミノ)
-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン

1.9-4.9

*市販たばこ7種類での最小値-最大値

表は、主流煙と副流煙に含まれる有害化学物質の含有量を比較したものです。副流煙/主流煙比が1より大きいものは、主流煙よりも副流煙にたくさん含まれているという意味になります。なお、たばこの銘柄別にみても、すべての銘柄で副流煙の方が主流煙より多くの有害化学物質を含んでいます。低タール・低ニコチンたばこの方が、主流煙の化学物質量が低いためにこの比率が高くなる傾向が認められています。

室内環境下での喫煙は、副流煙に含まれる有害化学物質が一気に室内空気に拡散し、喫煙者を含む多くの人の健康に影響を及ぼすことがわかります。

加熱式たばこの煙と受動喫煙

最近では、加熱式たばこの種類も増えてきました。これらの加熱式たばこの煙(正確にはエアロゾル)にも有害な化学物質は含まれています。たばこ会社は、加熱式たばこ煙に含まれる有害成分量が紙巻たばこ煙よりも少ないため、切り換えによってリスクが低減すると宣伝しています。しかしながら、加熱式たばこ煙の方が多い成分があったり、まだ測定や評価がなされていない成分も多かったりしており、その主張は根拠が不十分とされています[2]

加熱式たばこによる受動喫煙については、有害な化学物質にさらされるレベルが紙巻たばこよりも低いとされていますが、健康影響についての研究は限られているのが実情です。2021年11月現在、新型コロナウイルス感染拡大により、在宅勤務やステイホームの推奨に伴って自宅で過ごす時間が長くなっている状況下、たばこ会社は家族の健康のため加熱式たばこへの切り換えることを訴えかけていますが、本当に家族の健康を考えるのであれば禁煙すべきであることは言うまでもありません。

(最終更新日:2021年11月18日)

中村 正和

中村 正和 なかむら まさかず

公益社団法人 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長

1980年自治医科大学卒業。労働衛生コンサルタント、日本公衆衛生学会認定専門家、厚生科学審議会専門委員、日本学術会議連携会員。専門は予防医学、健康教育、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策とNCD(生活習慣病)対策。厚労科研研究班代表者として、たばこ政策研究に従事。研究成果をもとに禁煙治療の保険適用、たばこ価格政策、健康日本21における喫煙の数値目標の設定、特定健診における禁煙支援の強化等の政策実現に貢献。

平野 公康

平野 公康 ひらの ともやす

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部 たばこ政策情報室長

1994年東京大学理学部生物学科卒業。専門はたばこ政策。研究テーマはたばこ煙の健康影響評価、喫煙室・喫煙所からの煙流出の評価、たばこの広告・販促・後援活動の影響。厚生労働省健康局健康課たばこ対策専門官、健康局参与(たばこ対策)として、健康増進法改正やたばこ規制枠組条約の日本国政府窓口業務に従事。望まない受動喫煙を防ぐ法律の施行やたばこ規制枠組条約の履行推進等の政策実現に貢献。

参考文献

  1. 厚生労働省
    喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書
    2016.
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html
  2. WHO(世界保健機関)
    たばこ規制枠組条約(FCTC)第9回締約国会議資料
    https://untobaccocontrol.org/downloads/cop9/main-documents/FCTC_COP9_9_EN.pdf