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たばこの煙と受動喫煙

たばこの煙には、喫煙者が吸う「主流煙」、喫煙者が吐き出した「呼出煙」、たばこから立ち上る「副流煙」があり、受動喫煙ではこれらが混ざった中古の煙を吸わされていることになります。煙に含まれる発がん性物質などの有害成分は、主流煙より副流煙に多く含まれるものがあり、マナーという考え方だけでは解決できない健康問題です。

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たばこのけむりは「紫煙」と表現されたりしますが、火がついた部分から立ち上る煙のことを「副流煙」といいます。フィルターなど吸い口から喫煙者が吸い込む煙を「主流煙」といいます。喫煙者が吸って吐き出した煙を「呼出煙」といいます。またこれらの発生源からなる煙が混ざって漂うことになりますが、そういう煙を海外では「中古の煙(セカンドハンドスモーク / SHS: Second hand smoke)」と呼んでいます。そしてそれを吸うことを「受動喫煙」といいます。

受動喫煙とは、文字通り「受け身」の「喫煙」です。自分がたばこに火をつけて吸うのではなくても、他人の吸っているたばこの煙を吸ってしまうことが「受動喫煙」です。健康増進法第25条では「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義されています。

受動喫煙の健康被害については「受動喫煙 – 他人の喫煙の影響」にまとめてありますが、そもそも「けむり」とはどのようなものなのでしょうか。
たばこそのものからは約3,000種類、主流煙からは約4,000種類、たばこと煙とに共通するものは約1,000種類に及ぶ化学物質が分離されると報告されています。喫煙という行為は、葉そのものに含まれるもの、乾燥や加工・製造の過程で生成・添加されるもの、そしてそれらが燃焼・不完全燃焼する間に生成されるものをまとめて吸い込んでいることになります。

表1. 副流煙中のヒト発がん性物質
グループ1:Carcinogenic to humans 「ヒトに対して発がん性がある」[1]
成分 単位 範囲 副流煙/主流煙比*
ベンゼン μg/本 70.7 – 134.3 1.07
カドミウム ng/本 122 – 265 1.47
2-アミノナフタレン ng/本 113.5 – 171.6 8.83
ニッケル ng/本 検出不可(限界6.8ng/本)
測定不可(限界10ng/本)
クロム ng/本 検出不可(限界8ng/本) 1.51
砒素 ng/本 3.5 – 26.5 5.41
4-アミノビフェニル ng/本 20.8 – 31.8 0.40
NNK ng/本 50.7 – 95.7 0.43
NNN ng/本 69.8 – 115.2 3.22
ベンゾ(a)ピレン ng/本 51.8 – 94.5
表2. 副流煙中のヒト発がん性物質
グループ2A:Probably carcinogenic to humans 「ヒトに対しておそらく発がん性がある」[1]
成分 単位 範囲 副流煙/主流煙比*
ホルムアルデヒド μg/本 540.4 – 967.5 14.78
1,3-ブタジエン μg/本 81.3 – 134.7 1.30
表3. 副流煙中のヒト発がん性物質
グループ2B:Possibly carcinogenic to humans 「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」[1]
成分 単位 範囲 副流煙/主流煙比*
アセトアルデヒド μg/本 1683.7 – 2586.8 1.31
イソプレン μg/本 743.2 – 1162.8 1.33
カテコール μg/本 64.5 – 107.0 0.85
アクリロニトリル μg/本 24.1 – 43.9 1.27
スチレン μg/本 23.2 – 46.1 2.60
ng/本 2.7 – 6.6 0.09

*市販紙巻たばこ12種での中央値
NNK/NNNのグループは89巻(2007)、ベンゾ(a)ピレンのグループはIARCホームページの92巻(2008)の記述による

表1-3ですが、主流煙と副流煙に含まれる発がん性物質の含有量を比較したものです。副流煙/主流煙比が1より大きいものは、主流煙よりも副流煙にたくさん含まれているという意味になります。「グループ1」の発がん性物質でも、半分の5つははっきりと副流煙に多いことがわかります。

さらに表4は、室内空気汚染問題いわゆる「シックハウス」での指針値で、たばこにも含まれるものを抜き出したものです。たとえばアセトアルデヒドですが、シックハウスの指針値は1立方メートルあたり48μgですが、たばこの副流煙には少なくとも1本あたり1683.7μg含まれているわけになりますの、吸収や換気などがないとすれば、たばこ1本を燃やし立ち上る煙だけで35立方メートル、6畳半ほどの部屋ならシックハウス指針値を越えてしまうということになります。

表4. 室内空気汚染問題に係る個別物質の室内濃度指針値(一部)[2]
成分【IARC評価】
(設定日)
毒性指標 室内濃度指標値*
アセトアルデヒド【2B】
(2002.01.22)
ラットの経気道曝露における鼻腔嗅覚上皮への影響 48μg/m3
(0.03ppm)
ホルムアルデヒド【2A】
(1997.06.13)
ヒト吸入曝露における鼻咽頭粘膜への刺激 100μg/m3
(0.08ppm)
スチレン【2B】
(2000.12.15)
ラット吸入曝露における脳や肝臓への影響 220μg/m3
(0.05ppm)

*両単位の換算は25℃の場合による
平成14年(2002年)2月の中間報告による同指針では、この他トルエン・キシレンなど合計13物質14項目が掲げられている。

ここでは発がん性物質とシックハウスに注目しただけですが、残り無数の化合物にはまだ有害性が確認されていないものや、少なくとも粘膜などに刺激を与える物質がたくさんあります。たばこの煙が発がん性物質など規制の対象となる有害物質を多く含んでいることを考えると、喫煙者のマナーだけの問題としては解決できない課題と言えます。

参考文献

  1. IARC
    Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans.
    Volume 83, Tobacco Smoke and Involuntary Smoking.
    2004.
  2. 厚生労働省
    シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0208-3.html
  3. 米国公衆衛生総監報告書(2006年)
    CDC(Centers for Disease Control and Prevention) / 2006 Surgeon General's Report
    http://www.cdc.gov/tobacco/data_statistics/sgr/2006/
  4. 国際がん研究機関(IARC)
    ヒト発癌性評価報告書
    2004.