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食品による窒息

食品による窒息事故があとをたちません。毎年のように年末年始には高齢者のもちによる窒息事故のニュースが報道される一方、幼児を中心としてカップ入りゼリーによる死亡事故などがみられます。食品安全委員会では食品に関するリスク評価を実施中であり、その経緯などについて報道発表がなされました。また昨年末には重ねて「食べ物による窒息事故を防ぐために」を発表し、その中では応急手当を図入りで紹介して注意を促しています。

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食品による窒息事故での死亡数は、人口動態統計において「不慮の事故における気道閉塞を生じた食物の誤えん」からみることができますが、その原因となる食品(食べ物)や死亡しなかった事故数の把握はできていません。平成20年(2008年)の人口動態統計では総死亡数4727人、年齢層別にみると65歳以上が86.4%を占め、80歳以上は全体の56.4%と半数を超えていました。一方で10歳未満は全体の0.6%にすぎませんが、0歳19人・1-4歳11人・5-9歳1人が亡くなっていました。転帰の状況から、死に至らなくともかなりの食品による窒息事故が起こっていることが推察されます。平成20年に実施された消防本部と救命救急センターを対象とした質問紙調査では、人口動態統計と同様に両調査とも65歳以上の高齢者が占める割合が非常に高く(約80%)、80歳以上は全体の約50%、10歳未満は約5%から約10%の範囲でした。原因食品にはカレーライスといった献立名や複数の食品名が記載されているため「何が」気道を閉塞させたか真に把握することが困難となっています。

子どもを対象として平成20年6月から8ヶ月間に食品による窒息事故で救急診療を受けた症例は、日本救急医学会救急科専門医指定施設及び救命救急センター433施設を対象とした質問紙調査では10施設12例であり、全例が自宅において事故を起こしていました。同年に実施された15歳以下の子どもをもつ母親(1015人)対象のWebサイトによる質問紙調査結果では、直近1年間での子どもの窒息事故の経験は63人(6.2%)で、そのうち約70%は1回の経験であったものの、5回の経験例を最高に複数回窒息を経験している子どもも少なくありませんでした。年齢別では1歳が最も多く14人で、3歳以下が約70%を占めていました。原因となった食品は4つのいずれの調査も「飴」が最多でした。食品安全委員会は2つのケースを設定して窒息事故頻度を試算しています。その結果いずれのケースも餅が最も高く、上位3つの残りは飴とカップ入りゼリーで、4番目はいずれもパンでした。

食品による窒息事故は、食品(物性など)・ヒト(年齢・咽頭の形状・基礎疾患の有無・摂食行動)・環境(周りの人々の注意など)の3面から捉えられます。食品のリスク評価については食品安全委員会に委ねるとして、研究では咽頭の形状によるリスクも少なからずあることが予測されています。また子どもひとりで食べていたなど、摂食時の環境も事故例からはわかってきました。決して食品だけの問題ではなく、この3つの面それぞれのリスクが重なり、総合的に高くなった時に事故が発生することが予測できます。またWeb調査で窒息事故に対する応急処置について図を示して回答を求めたところ、「知らない」のは16.4%にすぎず、「知っていてもできるかどうか自信がない」との回答が73.1%でした。今後は実践的な応急処置講習などが必要と考えられます。

順天堂大学 医学部 公衆衛生学教室 堀口 逸子

参考文献

  1. 食品安全委員会
    食べ物による窒息事故を防ぐために
    http://www.fsc.go.jp/sonota/yobou_syoku_jiko2005.pdf
  2. 食品安全委員会
    こんにゃく入りゼリー等食品による窒息事故に係るリスク評価に関連する情報(Q&A)
    http://www.fsc.go.jp/sonota/konjak-jelly/qa-konjak-jelly.pdf
  3. 平成20年度 厚生労働科学特別研究事業
    「食品による窒息の要因分析」報告書
  4. 平成19年度 厚生労働科学特別研究事業
    「食品による窒息の現状把握と原因分析」報告書