子どもの生活時間の夜型化や睡眠時間の減少は、成長の遅れ・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらします。睡眠を妨げる肥満による睡眠時無呼吸症候群は、子どもにも増えています。適切な睡眠習慣と健康に関する知識を啓発していく必要があります。
現代社会が24時間化するとともに生活は夜型化し、睡眠時間は減少する傾向にあります。こうした社会的環境の変化は、子どもの生活にも影響を与えています。
財団法人日本小児保健協会が実施した調査によると、「夜10時以降に就寝する子ども」の割合は、1歳6ヶ月・2歳・3歳で半数を超えており、子どもの生活時間の夜型化の実態が明らかになってきました。これは10年20年前に比べて、顕著に増加しています。また小・中・高校と学年が進むにつれて就床時刻が遅くなること、睡眠時間が少なくなり「睡眠不足を感じている児童生徒」の割合が増加していることなどが示されています。
厚生労働省による21世紀出生児縦断調査では、2歳6ヶ月の児童に対する睡眠習慣に関する質問が設定されています。これによると大都市部に居住する幼児は郡部に居住する幼児に比べて、就寝時刻と起床時刻が遅い傾向にあることが示されました。
睡眠不足は、成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらします。子どもの場合、眠気をうまく意識することができずに、イライラ・多動・衝動行為などとしてみられることも少なくありません。また睡眠不足は将来の肥満の危険因子になることも示されています。適切な睡眠習慣と健康に関する知識を、学校教育として行っていく、あるいは社会全体に啓発活動を行うなどのことが必要です。
代表的な子どもの睡眠障害に、睡眠時無呼吸症候群があります。
子どもの睡眠時無呼吸症候群の主な原因は、アデノイド・扁桃肥大です。3-6歳の児童に最も多く、肥満よりむしろやせ型の子供に多いのが特徴です。症状としては、夜間のいびきや無呼吸・睡眠中の陥没呼吸・起床時の不機嫌などがみられます。この年代は習慣的に昼寝をすることが少なくないので、日中の過眠よりも多動・衝動行為・学習障害などがみられることが多いといわれています。治療としてはアデノイド切除術や扁桃摘出術がきわめて効果的です。
近年子どもの肥満が増加しており、小学校高学年から中学生では肥満にともなう睡眠時無呼吸症候群が多くみられます。子どもの肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を合併することが多く、食事や生活習慣を見直し、減量指導が必要となります。
その他、子どもによくみられる睡眠障害には、ねぼけやおねしょ(夜尿)があります。ねぼけは睡眠時随伴症のひとつで、睡眠時遊行症と睡眠時驚愕症が代表的です。睡眠時遊行症では、起きあがって寝床の上に座るだけのものから、ドアや外に向かって歩き出すものまでさまざまです。
睡眠時驚愕症は、叫び声が特徴で、眼を見開き、恐怖に引きつる顔、多量の汗、荒い呼吸などを伴います。子どもの場合は、遺伝の影響を受けているもの、発達に伴う一過性のもの、あるいは心理的ストレスによるものなどがあると考えられています。なだめるとかえって興奮することが多いので、危険のないように見守ることで対応します。多くは思春期になると消失します。
5歳以降週に2度以上おねしょがあれば、睡眠時遺尿症と呼ばれます。これ以前のおねしょは病気と考えなくても大丈夫です。ストレスによって生じたり、悪化することもあるため、対応の基本はあせらず・怒らずです。