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顎関節症とは(特徴・分類など)

顎関節症とは、顎(あご)の関節とその顎に関連する筋肉=咀嚼筋(そしゃくきん)の病気です。現時点で世界的に認められている共通な定義はありません。顎の関節と咀嚼筋の問題が混在しているため、混乱されることも多くなっています。

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1. 定義・分類

顎関節症とは、顎の関節とその顎に関連する筋肉(咀嚼筋)の病気です。現時点で世界的に認められている共通な定義はありません。顎の関節と咀嚼筋の問題が混在しているため、混乱されることも多くなっています。日本顎関節学会においては、表のようにその病態から5つの症型に分類しています。

顎関節症の疾患概念(日本顎関節学会)

顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋の疼痛・関節(雑)音・開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には「咀嚼筋障害」「関節包・靭帯障害」「関節円板障害」「変形性関節症」などが含まれる。

表: 顎関節症の症例分類(日本顎関節学会)

顎関節症Ⅰ型
咀嚼筋障害(咀嚼筋障害を主徴候としたもの)
顎関節症Ⅱ型
関節包・靭帯障害(円盤後部組織・関節包・靭帯の慢性外傷性病変を主徴候としたもの)
顎関節症Ⅲ型
関節円板障害(関節円板の異常を主徴候としたもの)
a: 復位をともなう関節円板転位
b: 復位をともなわない関節円板転位
顎関節症Ⅳ型
変形性関節症(退行性病変を主徴候としたもの)
その他(顎関節症Ⅴ型)
上記の分類に該当しないもの

2. 診断基準

顎関節症の診断基準の世界的な基準は存在しません。しかし日本顎関節学会の診断基準など多くの診断基準では、最初に他の疾患でないこと(除外診断)という鑑別が重要とされています。

顎関節症の診断基準(日本顎関節学会 1998)

顎関節や咀嚼筋等の疼痛・関節(雑)音・開口障害ないし顎運動異常を主要症候とし、類似の症候を呈する疾患を除外したもの。

すなわち顎関節症と鑑別すべき顎関節疾患を理解することが、顎関節症の診断には必要不可欠であると言えます。たとえば、破傷風(全身の感染)・化膿性顎関節炎(関節の化膿)・骨腫(骨の腫瘍)・悪性腫瘍(筋肉への腫瘍の進展)・脳疾患などがあげられます。しかしこれらの疾患の発生率は少ないため、ポイントを的確に診断すれば診断は容易とされています。

2007年に杉崎が簡単なスクリーニングと他疾患の鑑別のポイントをまとめています。実際に顎関節の問題を主訴としている場合、その精度は上昇します。なお杉崎はこの報告で、鑑別診断で注意すべき臨床症状をまとめています。これは一般医が腫瘍性病変など他疾患を見逃さないポイントとして重要だと考えられますが、患者にとっても役立つと思われます。すなわちこれらの症状の場合は、すぐに専門医療機関を受診する必要があります。

診断手順(杉崎正志)

診断のための質問
「口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがありますか?」
この質問に「はい」と回答した場合は顎関節症である可能性が認められる。

その後の推奨される診断法として、以下の要件の一つを満たす必要がある。

  1. 臨床症状として関節痛・咀嚼筋痛・開口障害(下顎の前方運動障害)あるいは関節雑音の少なくともひとつを有している。
  2. 回転パノラマ・パノラマ4分割写真で骨辺縁の局所的不透過性増加・骨皮質の断裂・呼吸変化ないし呼吸変化を伴う下顎頭の矮小化を有する。
  3. 関節雑音の既往を有し、その後に開口障害が出現するという既往がある。

鑑別診断で注意すべき臨床症状(杉崎正志)

  1. 開口障害25mm未満
  2. 二週間の一般的顎関節治療に反応しない・悪化する
  3. 顎関節部や咀嚼筋部の腫脹を認める
  4. 神経脱落症状を認める
  5. 発熱を伴う
  6. 他関節に症状を伴う
  7. 安静時痛を伴う

東海市民病院分院 歯科口腔外科 湯浅 秀道

参考文献

  1. 日本顎関節学会.
    顎関節症に関する小委員会:顎関節疾患および顎関節症の分類案.
    顎関節研究会誌, 7: 135, 1986.
  2. 日本顎関節学会.
    顎関節疾患および顎関節症の分類(改定案).
    日顎誌8: 113-126, 1996.
  3. 杉崎正志.
    「口腔機能と口腔疾患の効果的スクリーニング法に関する研究」
    平成19年度厚生労働科学研究費補助金(医療安全・医療技術評価総合研究事業)