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精神疾患の早期発見・治療の重要性

近年、心の病気についてもできるだけ早くその症状に気づき、正しい対処や治療が速やかになされれば、回復も早く軽症で済む可能性があることがわかってきました。そのため精神的不調や障害を早期に発見し、治療開始へと導くサービスの整備や取り組みが国際的に広く実践されつつあります。

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どんな病気でもできるだけ早く症状に気づき(早期発見)、速やかにきちんとした治療(早期治療)を受けることができれば、症状の悪化を防ぐことができ、回復も早く、軽症で済むことが多いといわれています。近年、心の病気についてもできるだけ早くその症状に気づき、正しい対処や治療が速やかになされれば、回復も早く軽症で済む可能性があることがわかってきました。

精神疾患(心の病気)を最も発病しやすいのは、10~20代の若者といわれています。この時期はその後の人生で重要となる学力や対人関係能力・生活能力などを発展させる重要な時期に該当します。そのためこの時期に精神的な不調や障害を抱えながら、相談や支援・治療などを受けられずにいる場合、症状や障害が重症化・慢性化するだけでなく、その影響によって諸能力の発達も阻害される可能性があります。そのため若者の精神的不調や障害を早期に発見し、治療開始へと導くサービスや取り組みの必要性が世界的に広く認識されつつあります。特にオーストラリアやイギリスなどでは精神疾患の早期発見・治療の実践が積極的に行われ、すでに成果をあげています。

一般的に心の病気を発病してから治療開始までの期間はけっして短くありません。例えば統合失調症という病気については、発病から治療開始までの期間が平均で約1年あるといわれています。この未治療の期間のことをDUP(Duration of Untreated Psychosis)(精神病未治療期間)と呼びますが、このDUPが短ければ短いほど予後が良いといわれています。逆にこのDUPが長ければ長いほど、症状や障害が重症化・慢性化する可能性が増えます。

また統合失調症などの病気を発症してから最初の2-3年の状態は、その後の長期的な経過に大きな影響を与えることがわかってきています。すなわちもしこの発病後の数年間に適切な治療を継続的に受けることができ、状態を良好に維持することができれば、その後の病気の経過も良好である可能性が高まります。そのためDUPを短くし、病初期に適切な治療を継続的に受けられる社会的環境を整えることが早期発見・治療の実践において不可欠となります。

すでに精神疾患の早期発見・治療に関するサービスを精神保健のサービスの重要な一部として実施しているオーストラリアやイギリスでは、DUPが短縮化され病気の一部の症状が軽症化したこと、また入院患者が減り地域での生活を続けながら治療をする患者が増えたこと、入院患者が減少したことで医療コストが大幅に減少したことなどの成果が報告されています。

現在、日本においてもいくつかの地域で、早期発見・早期治療の試験的取り組みが行われています。今後ますます精神疾患の早期発見・治療を促す社会的環境の整備や実践を進めていく必要があると思われます。

三重大学大学院 医学系研究科 精神病態学分野 西田 淳志