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精神保健福祉センターと保健所

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定された都道府県(指定都市)の精神保健福祉に関する技術的中核機関です。保健所は、地域保健法第3章に規定された地域保健対策の広域的・専門的・技術的推進のための拠点です。

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精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、1965年の精神衛生法改正に「精神衛生センター」(任意設置)として規定され、1987年の精神保健法への改正によって「精神保健センター」に、さらに1995年の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)」への改正によって「精神保健福祉センター」に名称変更されました[1]
2002年には地方分権推進計画を踏まえて名称や組織が弾力化されるとともに、精神医療審査会の審査局等の行政事務を行うようになり、都道府県(指定都市)に必置の機関となりました。

「精神保健福祉センター運営要領」(2013年4月26日一部改正)には、精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定されているとおり、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究を行い、並びに相談及び指導のうち複雑困難なものを行うとともに、精神医療審査会の事務並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の申請に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行う施設であって、都道府県(指定都市を含む)における精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動推進の中核となる機能を備えなければならない、とあります[2]

精神保健福祉センターの業務は、「1. 企画立案」「2. 技術指導及び技術援助」「3. 人材育成」「4. 普及啓発」「5. 調査研究」「6. 精神保健福祉相談」「7. 組織育成」「8. 精神医療審査会の審査に関する事務」「9.自立支援医療(精神通院医療)及び精神障害者保健福祉手帳の判定」があげられています。

保健所

保健所は、1937年の旧保健所法によって、保健衛生国策の最前線の機構として整備されてきましたが、第2次世界大戦により壊滅状態となり、1947年の新保健所法によって、保健指導業務・予防対策と管内地域の保健衛生に関する行政事務を合わせて実施する機関として現在の保健所が発足しました。その後1955年頃からの環境汚染問題の激化や超高齢化社会の到来、国民の健康に関するニーズの多様化・高度化等を背景に、対人保健サービスは地域住民に最も身近な市町村レベルで展開されることとなり、保健所は専門的あるいは広域的な対応を要するものを中心に担うことになりました。そして1994年の地域保健法によって、保健所は地域保健対策の広域的・専門的・技術的推進のための拠点に位置づけられました。

精神保健福祉に関しては、1965年の精神衛生法改正によって、地域における精神衛生行政の第一線と位置づけられました。そして精神衛生センターとともに、相談や訪問等から始まり、保健所デイケア・地域作業所づくり・精神障害者家族会の育成等に取り組んできました。

「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」(2012年3月30日一部改正)には、保健所は、地域精神保健福祉業務の中心的な行政機関として、精神保健福祉センター、福祉事務所、児童相談所、市町村、医療機関、障害福祉サービス事業所等の諸機関及び当事者団体、事業所、教育機関等を含めた地域社会との緊密な連絡協調のもとに、入院中心のケアから地域社会でのケアに福祉の理念を加えつつ、精神障害者の早期治療の促進並びに精神障害者の社会復帰及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るとともに、地域住民の精神的健康の保持増進を図るための諸活動を行うものとする、とあります[3]

保健所業務の実施として、「1.企画調整」「2.普及啓発」「3.研修」「4.組織育成」「5.相談」「6.訪問指導」「7.社会復帰及び自立と社会参加への支援」「8. 入院等関係事務」「9. ケース記録の整理及び秘密の保持等」「10. 市町村への協力及び連携」があげられています。

地域精神保健福祉活動の推進

このように精神保健福祉センターと保健所は、市町村や関係機関と連携して地域精神保健福祉活動の推進に努めてきました。2016年より、「入院医療中心から地域生活中心へ」の理念や精神障害者の人権、医療保護入院同意者のあり方等が国の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」で論議され、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」「多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制」を軸とした方向性が打ち出されました。これらは第7次医療計画・第5期障害福祉計画・第7期介護保険事業計画の国指針につながっています。精神保健福祉センターと保健所は、これら指針を活用し、自殺対策、災害支援、ひきこもり・発達障害対策、アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症対策、アウトリーチ活動など、様々な課題に対して貢献していくことが期待されています。

(最終更新日:2020年2月6日)

辻本 哲士

辻本 哲士 つじもと てつし

全国精神保健福祉センター長会会長

1991年滋賀医科大学医学部大学院修了。滋賀県や京都府の精神科病院に勤務。1993年4月から滋賀県立精神保健福祉センター・医療センターで、一般精神科や思春期精神医療、精神科救急、地域保健活動等に従事している。
現職は滋賀県立精神保健福祉センター所長、滋賀県立精神医療センター精神科部長・地域生活支援部地域医療連携係主席参事、滋賀県立小児保健医療センター主任部長、滋賀県健康医療福祉部障害福祉課主席参事、全国精神保健福祉センター長会会長。

参考文献

  1. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
    令和元年六月十四日公布(令和元年法律第三十七号)改正
    https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000123_20180401_428AC0000000065&openerCode=1
  2. 精神保健福祉センター運営要領について
    障発0426第6号
  3. 保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領について
    障発0330第21号