学習障害(限局性学習症、LD)は、読み書き能力や計算力などの算数機能に関する、特異的な発達障害のひとつです。学習障害には、読字の障害を伴うタイプ、書字表出の障害を伴うタイプ、算数の障害を伴うタイプの3つがあります。
学習障害には的確な診断・検査が必要で、一人ひとりの認知の特性に応じた対応法が求められます。ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などを伴う場合には、それらを考慮した配慮、学習支援も必要となり、家庭・学校・医療関係者の連携が欠かせません。
学習障害(限局性学習症、LD)には、教育的な立場でのLD(Learning Disabilities)と医学的な立場でのLD(Learning Disorders)の2つの考え方があります。最近は健常児とは異なった学習アプローチをとるという点から、Learning Differences(学び方の違い)と呼ぶ人もいます。
教育の立場では文部科学省の定義[1]にあるとおり、全般的な知的発達に遅れはないものの聞いたり話したり、推論したりする力など学習面での広い能力の障害を指し、医学的LDは「読み書きの特異的な障害」「計算能力など算数技能の獲得における特異的な発達障害」を指すことが多いようです。一時期、言語性LD・非言語性LDという言い方もされていましたが、現在は用いられません。学業不振がもたらされて、上記技能を必要とする日常生活を損なう段階で初めて診断されるものです。
小児期に生じる特異的な読み書き障害は発達性ディスレクシアとして知られ、知的な遅れや視聴覚障害がなく充分な教育歴と本人の努力がみられるにもかかわらず、知的能力から期待される読字能力を獲得することに困難がある状態、と定義されます。なお、通常、読み能力だけでなく書字能力も劣っています。
発達性ディスレクシアの発生頻度はアルファベット語圏で3~12%と報告されています。日本では2002年に続いて2012年に小中学校教師を対象とした全国調査[2]が行われました。それによると、学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在することが示されています。
日本語はひらがな・カタカナ・漢字の3つの文字表記がありますが、ひらがなの学習障害は0.8~2.1%の有病率とされます。漢字や英語の学習障害はそれよりさらに多いとも見積もられていますが、文字別の有病率も含めた詳細なデータは今後の研究課題です。
発達性ディスレクシアの診断は、標準化された読字・書字検査に基づいて行われることになっています。診断の流れを以下に述べます[3] [4]。
発達性ディスレクシアの読字や書字の特徴には、以下のものがあります。
学習障害が疑われるときには、中枢神経系の器質的な疾患の有無を明らかにするために、医学的な評価も重要となります。
これまでの精神運動発達の様子・病気の罹患歴などを確認し、必要な場合は頭部画像検査などが行われます。上記のように、心理検査によって視覚認知機能・視空間認知機能・音韻認識機能を知ることも重要です。発達性ディスレクシアでは音韻操作、呼称の速さの能力をみることが支援につながるため、専門家(小児神経科医師、言語聴覚士など)と相談することが必要になります。ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)がある場合は、学業不振症状がそれらに伴うものかどうか見極めが必要となります。家庭と学校、そして医療関係者の連携がとりわけ必要な疾患です。
最近の研究により、5-6歳の保育所・幼稚園の段階で読み書き障害のリスクをスクリーニングする観察シートも作成されています[5]。国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターのサイト(http://www.rehab.go.jp/ddis/)もご覧ください。
(最終更新日:2021年11月12日)