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交代制勤務者の食生活に関する留意点

わが国において交代制勤務は必要不可欠な勤務形態であり、交代制勤務に従事する勤労者の割合は年々増加の一途を辿っています。交代制勤務者は日によって勤務時間が異なり、睡眠時刻や食事の摂取時刻等が常に不規則になる生活を余儀なくされるため、体内に存在する生体リズムが乱れやすいと考えられます。

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規則正しい睡眠や食事が生体リズムを保つ

生体リズムは季節や月、日を単位として生体の代謝や内分泌等を調節するしくみですが、なかでも1日24時間の日周リズムは、脳に存在する中枢時計と、末梢組織に存在する末梢時計との相互作用によって巧妙に調節されています。中枢時計は毎朝の光により、末梢時計は朝食等の摂食活動により調節されるとされ、適正な生体リズムを保つためには、睡眠や食事といった生活習慣を規則正しく送ることが重要であると考えられています。

しかし、日常的に不規則な生活を行う交代制勤務者が、決まった時刻に規則正しい生活習慣を実践することは難しいという現実があります。勤務実態に合わせた睡眠のとり方や食生活に関する具体的な対策案はあまり示されておらず、不明な点は未だ多く残されていますが、近年の時間生物学、時間栄養学の発展により、食生活のあり方に関するいくつかの留意点が提示されていますので、以下にご紹介します。

食生活パターンをなるべく一定に

まず一つ目に、食生活パターンをなるべく一定に保つということです。交代制勤務ではどうしても食事の摂取時刻が乱れてしまいますが、食生活パターンの乱れは、肥満を起因とする生活習慣病の発症リスクを高めると考えられています。勤務実態に合わせ、なるべく日々の食事摂取時刻が大きく崩れないように、食事摂取のタイミングを考えることが大切です。特に夜勤勤務の場合、通常は食事を摂取しない夜中の時間帯に食事をとる場合があると考えられますが、時間栄養学の研究結果によると、夜間遅い時刻の食事摂取は血糖値の増加を引き起こしやすく、結果的に肥満や糖尿病発症リスクを高めると報告されています。そのため、夜勤勤務の場合であっても、なるべく普段の食生活パターンに近い時刻に食事を摂取することが望まれます。

夜間遅くの食事は内容に気を配って

一方で、どうしても夜間遅い時刻の食事摂取が避けられない状況もあると考えられます。そのため、二つ目としての留意点として、夜間遅い時刻に食事を摂取する場合は、その食事内容に気を配ることが大切です。例えば、おにぎりだけ、カップ麺だけ、といったご飯やパン、麺類などの糖質を主体とする主食のみの食事はより血糖上昇につながりやすく、夜間遅い時刻の食事としておすすめできません。主菜(魚や肉、卵などたんぱく質を中心とした料理)と副菜(野菜を中心とした料理)を組み合わせ、バランスよく食べることが望まれます。また、夜勤時に砂糖入りの飲料やスナック菓子が好まれる傾向があるとの報告もありますが、これらもやはり肥満を助長します。交代勤務であっても食生活の基本はバランスのよい食事です。菓子類や嗜好飲料を多く取り過ぎないこと、また主食だけに偏る食事とならないように、1日の食事の中で主菜や副菜、乳製品、果物等をバランスよく摂取することが大切です。

欠食は避けて1日3食、または分割食を

また、交代制勤務者の中には、勤務時間の変動により、うまく食事摂取のタイミングが計れず、1日3食ではなく、1日2食以下に食事回数が減少するケースも認められます。しかし、1日当たりの食事回数が減少すると、1回当たりの食事量がまとまった量となり、体重増加を引き起こす可能性が高くなります。そのため、三つ目の留意点として、欠食が生じないように1日3食を食べられるように配慮することが望まれます。また、1食分の食事を複数回に分けて摂取する「分割食」という食べ方も示されています。分割食とは、例えば夕食の一部を夕刻に摂取し、その分、夜間遅い時刻の食事量を減らすという方法です。分割食により夜間遅い時刻の食事摂取の割合を減らすことで、夜間の血糖上昇や肥満を避けるという考え方です。勤務時刻の状況によっては食事回数を増やすことも一案かもしれません。

職種による勤務形態も様々であることから、あるべき明確な正解をここに記すことは難しいですが、個々人の勤務形態や実態に合わせ、より最適なあり方を考察し、実践につなげること、また、それらを支える社会環境の整備も重要であると考えられます。

(最終更新日:2021年2月16日)

福村智恵 ふくむらともえ

大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座 准教授

博士(栄養学)、管理栄養士。大阪市立大学助手、講師を経て2016年より現職。
専門は応用栄養学、公衆栄養学。

参考文献

  1. 柴田重信編
    時間栄養学−時計遺伝子、体内時計、食生活をつなぐ
    化学同人,2020
  2. 森河裕子
    夜勤交代勤務と糖尿病発症リスク
    労働の科学 65, p525-528, 2010
  3. 吉崎貴大ほか
    交代制勤務に従事する女性看護師および介護士における食習慣および生活時間とBMIの関連
    日本栄養・食糧学会誌 63, p161-167, 2010
  4. 福村智恵ほか
    男性交代制勤務者における身体状況と生活時間および食事摂取状況の関連性
    産業衛生学雑誌 57, p286-296, 2015