市場にはいわゆる「健康食品」と呼ばれる食品が数多く流通していますが、「サプリメント」「栄養補助食品」「栄養強化食品」「健康飲料」などの名称にはどれも法令上の定義はありません。これらの食品を含む通常の食品は、食品の「機能」を表示することはできません。日本では国によって制度化されている食品は保健機能食品のみです。保健機能食品は長らく「特定保健用食品」及び「栄養機能食品」の2つだけでしたが、2015年の食品表示法の施行により、食品の機能を表示できる食品として機能性表示食品が加わりました。ここでは特保(特定保健用食品)を中心に、栄養機能食品及び機能性表示食品についても概説します。
特保(特定保健用食品)とは、生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品のことです。消費者庁長官の許可を得ることにより、特定の保健の用途に適する旨を表示できるようになります。
特定保健用食品に含まれる保健機能を有する成分を「関与成分」といいます。通常、特定保健用食品は有効性・安全性を消費者庁が個別に審査します。有効性の証明として、査読付きの研究雑誌に掲載されることが条件となっています。また定められた試験機関によって関与成分の含有量の分析試験も行われます。こうした審査を経て認可された食品は特定保健用食品として【図1】のマークと、特定の保健機能について表示することができます。
現在までに「血糖・血圧・血中のコレステロールなどを正常に保つことを助ける」「おなかの調子を整える」「骨の健康に役立つ」などの保健機能の表示が許可されています。保健機能の表示は同じでも、関与成分の種類によっては作用機序が異なることもあります。摂取の際にはパッケージやホームページ等で関与成分や作用機序について確認しましょう。
特定保健用食品は医薬品ではなく食品であるため、疾病名の表示や病態の改善に関する表示はできません。しかし2005年に、関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合には、疾病名の表示が認められるようになりました。現在、この新たな制度によって「疾病リスク低減表示」が認められている関与成分は「カルシウム」と「葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)」で、下記のように表示されます。
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関与成分については、定められた規格基準への適合性のみの審査で許可されます。
特定保健用食品の審査で要求される有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認できる食品については、「条件付き特定用保健食品」として許可されます。限定的な科学的根拠である旨の表示をすることが条件とされています。
人の生命・健康の維持に必要な特定の栄養素の補給のために利用されることを目的とした食品で、科学的根拠が充分にある栄養機能について表示することができます。栄養素の名称と機能だけでなく、「日本人の食事摂取基準」に基づいた一日の摂取目安量(上限・下限量)や摂取上の注意事項も表示する義務があります。ただし国が決めた基準に沿っていれば、許可や届け等なくして、食品に含まれている栄養成分の栄養機能を表示することができます。現在規格基準が定められている栄養素は下記のビタミンとミネラル、及びn-3系脂肪酸です。
機能性を分かりやすく表示した食品の選択肢を増やすことを目的として、2015年に「機能性表示食品」が加わりました。特定保健用食品と同様に保健機能を表示することができる食品です。しかし特定保健用食品と異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではなく、事業者の責任で保健機能を表示します。その保健機能の有効性の科学的根拠や安全性などの情報を事業者が消費者庁へ「届出」を行うことが決められています。届け出られた情報については、消費者庁のウェブサイトで確認できます。
機能性の評価は、次の①、または②により行われることになっています。
①最終製品を用いた臨床試験
②最終製品又は機能性関与成分に関する文献調査(研究レビュー:肯定的な結果の研究論文だけでなく、否定的な結果の研究論文についても合わせて評価する)
機能性の評価を①、または②のどちらで行ったかによって、保健機能の表示が次のように異なります。
①の場合:「〇〇の機能があります」
②の場合:「〇〇の機能があると報告されています」
特定保健用食品、栄養機能食品、及び機能性表示食品はいずれも医薬品ではなく、疾病の治療・治癒・予防等を目的として摂取するものではありません。これらの食品の摂取に当たっては、食事からの栄養摂取や食生活の改善を基本とした上で、機能性や目安量、作用機序など公開されている情報を充分に確認するようにしましょう。
(最終更新日:2021年11月01日)