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加齢とエネルギー代謝

一般的に加齢に伴って基礎代謝量は低下します。その主な理由として筋肉などの除脂肪量の低下があげられます。このことは活動時のエネルギー代謝量が低くなることにもつながります。また、活動量の低下などその他複数の要因が組み合わさり、総エネルギー消費量(24時間相当)も加齢に伴い低下していきます。

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【表1】は食事摂取基準2015年度版に示されている、日本人の年代別基礎代謝基準値です。性別を問わず加齢とともに基礎代謝量が低くなっています。
例えば体重70kgの男性の場合、基礎代謝量の推定値は、20歳代で1680kcal、50歳代で1505kcalとなり、1日でおよそ175kcalの差になります。

表1: 日本人の基礎代謝基準値[1]
性別 男性 女性
年齢 基礎代謝
基準値
(kcal/kg/日)
参照体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
基礎代謝
基準値
(kcal/kg/日)
参照体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
1-2歳 61.0 11.5 700 59.7 11.0 660
3-5歳 54.8 16.5 900 52.2 16.1 840
6-7歳 44.3 22.2 980 41.9 21.9 920
8-9歳 40.8 28.0 1140 38.3 27.4 1050
10-11歳 37.4 35.6 1330 34.8 36.3 1260
12-14歳 31.0 49.0 1520 29.6 47.5 1410
15-17歳 27.0 59.7 1610 25.3 51.9 1310
18-29歳 24.0 63.2 1520 22.1 50.0 1110
30-49歳 22.3 68.5 1530 21.7 53.1 1150
50-69歳 21.5 65.3 1400 20.7 53.0 1100
70歳以上 21.5 60.0 1290 20.7 49.5 1020

【表2】に示しているように、安静時の代謝量は組織ごとで大きく異なります。臓器では代謝量が高く、脂肪組織では低くなっています。また骨格筋の代謝量は、臓器よりも低いですが脂肪組織よりも高いことがわかります。脂肪は加齢に伴って蓄積していく傾向にありますが、代謝率(単位当たりの代謝量)が低いので大幅な増加にはつながりません。加齢に伴う基礎代謝量の低下は、骨格筋量の減少が主な理由としてあげられます。ただし、それだけではすべての説明がつかず、各臓器における代謝率の低下がその他の要因として考えられています。

表2: ヒトの臓器・組織における安静時代謝量[2]
臓器・組織 重量 (kg) エネルギー代謝量 比率 (%)
(kcal/kg/日) (kcal/日)
全身 70.0 24 1700 100
骨格筋 28.0 13 370 22
脂肪組織 15.0 4.5 70 4
肝臓 1.8 200 360 21
1.4 240 340 20
心臓 0.3 440 145 9
腎臓 0.3 440 137 8
その他 23.2 12 277 16

基礎代謝量が体格に大きく依存しているということは、活動時の代謝量も基礎代謝量と同様に考えてよいといえます。

【図1】は年齢別に見た1日のエネルギー消費量(体重当たり)を示したもので、20歳以降も加齢とともに減少しています。その要因として、基礎代謝量と同様に除脂肪量(骨格筋や臓器など)の減少や代謝率の低下があげられますが、身体活動量の減少もその一つとして考えられます。一般に同じ活動を行った場合は、体重の重い人ほどエネルギーを消費します。そのため体重の重い人と軽い人が同じ活動レベルで1日を過ごせば、体重の重い人の総エネルギー消費量(24時間相当)の方が多くなります。そこで、ある対象の1日の身体活動レベルが高いか低いかを体格補正をして評価する場合に、総エネルギー消費量を基礎代謝量で除した値(PAL: physical activity level)が用いられています。すなわちPALの値が高い人ほど、身体活動量が多い人ということになります。【図2】は一般的な体格を有する欧米人の結果ではありますが、加齢に応じてPALが減少傾向にあることがうかがえます。身体活動を活発に行うことは、エネルギー消費を高く維持させることに加えて筋肉量の減少を遅らせることにもつながりますので、加齢に伴う総エネルギー消費量の低下を防止することにつながります。

図1: 年齢別に見たエネルギー消費量([1]p.60より転載)

総エネルギー消費量およびPALと年齢の関係

図2: 総エネルギー消費量およびPALと年齢の関係[3]

総エネルギー消費量およびPALと年齢の関係

(最終更新日:2019年6月5日)

大河原 一憲

電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報学専攻 准教授

参考文献

  1. 厚生労働省
    日本人の食事摂取基準 2015年度版
    第一出版, 2015.
  2. 糸川嘉則ほか 編
    栄養学総論 改定第3版
    南江堂, 141-164, 2006.
  3. Roberts SB et al.
    Energy requirements and aging.
    Public Health Nutr, 8, 1028-36, 2005.