慢性不眠が治りにくい理由

いったん慢性不眠症に移行すると、なかなか自然に治りにくくなります。
これはナゼでしょうか。

原因の一つは、不眠症状が持続すると“こころの不眠”から“からだの不眠”に移行してしまうからです。震災のような大きなストレスを受けたときに、私たちは不安を感じ情動の興奮が起こります。そのため一過性ですが過剰に覚醒した状態に陥ります(情動的過覚醒)。過剰な覚醒が夜間にも持続するため自然な眠りの出現を妨げます。これが不眠の原因です。通常の場合には、危機的状況から抜けだし不安の原因が解決するにつれて情動的過覚醒は自然に緩和されて、不眠症状も改善してゆきます。

ただし、ストレスが甚大である、持続している、生活環境が改善されないなど、今回のような巨大震災による不眠の場合には、情動的過覚醒からなかなか抜け出せない方々がでてきます。特に、心配性で不安感が強い方、心配事があると他のことが手につかない"切り替え下手"の方、高齢の方、基礎疾患をお持ちの方などは情動的過覚醒が続きやすいと言われています。

個人差がありますが、情動的過覚醒(不安による不眠)が2ヶ月も続くと、今度は身体の過覚醒が生じるようになります(生理的過覚醒)。例えば、交感神経の緊張が持続的に高まる、ストレスホルモン(副腎皮質ホルモンなど)の分泌が過剰になる、基礎代謝が亢進する、体温が上昇するなど、絶えず身体的興奮が持続するようになります。いったん生理的過覚醒に陥ると、もともとの原因(震災ストレス、不安感)が解決しても不眠症状が改善せず、一人歩きを始めてしまいます。不眠が持続することで生理的過覚醒はさらに強くなる悪循環に陥ってしまうのです。

慢性不眠が治りにくい理由