口臭には生理的口臭と病的口臭がありますが、その原因はほとんどが舌苔(ぜったい:舌の表面につく白い苔状のもの)です。したがって舌の清掃による舌苔の除去が最も有効な予防法です。また何の自覚もないのに家族から口臭を指摘されるようになったら、歯周病が原因の可能性がありますので歯科医院での専門的な検査・治療が必要です。
口臭の原因は、87%が口の中にあることが明らかにされています[1]。口の中にいる嫌気性菌という種類の細菌が、タンパク質やアミノ酸を分解して揮発性硫黄化合物(VSC: Volatile Sulfur Compounds)という物質を作ります。これが口臭の主たる原因物質です。口臭はVSCが増える原因により、生理的口臭あるいは病的口臭に分けられます。
VSCは舌の上で最も多く作られます。これは舌に白い苔状のものが付着するためです。これを舌苔といいます。したがって生理的口臭の予防のためには歯磨きに加えて舌清掃を行って舌苔を除去し、舌を清潔に保つことが最も効果的です。
舌苔のつき方には個人差があり、さらに同じ人でも時間帯や体調によってつき方が異なりますが、このような差がなぜ起こるのかはよくわかっていません。しかし寝たきりで食物の経口摂取が困難な患者さんや健康な人でも起床時や絶食時などにその量が多くなる傾向があるようですから、咀嚼・嚥下活動やそれに伴う舌の運動や唾液の分泌量と大きく関係していると考えられます。
さらに口臭の一日の変動リズムも食事のリズムとよく対応しています【図】。したがって舌清掃は朝起きてすぐに行い、食事は毎日規則正しくとり、よくかんで食べるようにしてください。
舌清掃は、毛先の柔らかい小児用の歯ブラシや目の粗いタオルなどを使ってもかまいませんが、専用の舌ブラシを使うとより効果的です。イラストを参考に以下の手順で行ってください。
一日の舌清掃の回数は、起床時の一回で結構です。それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また舌に傷や潰瘍があるときは、舌清掃を中止してください。
口臭は健康な人でも強くなることがありますが、何らかの病的な原因があって口臭が強くなることがあります。これを病的口臭といいます。その代表的なものが歯周病です。それは歯周病の原因の多くがVSCを作る嫌気性菌であるからです。歯周病の他には、大きなむし歯や粘膜の潰瘍などが原因となることがありますが、これらの病気と異なり、歯周病はほとんど痛みもなく進行していきます。したがって何の自覚もないのに家族から口臭を指摘されるようになったら、一度歯科医院を受診して歯周病の検査を受け、専門的な治療を受けることで改善します。
一方口の中以外では、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)や、ごくまれに肝臓病や腎臓病などの全身疾患が原因となって口臭が強くなることがありますが、これらは口臭以外にも何らかの自覚症状が現れることがほとんどですから、あまり考えなくてもよいでしょう。
(最終更新日:2019年12月18日)