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ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について

ヘッドホンやイヤホンを使い、大きな音量で音楽などを聞き続けることにより、音の振動を脳へ伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れて起こる難聴です。少しずつ進行していくために初期には自覚しにくく、とはいえ失った聴覚は戻りません。大きすぎる音量で聞かない、長時間連続して聞かずに定期的に耳を休ませるなどの予防が重要となります。

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ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)とは

大きな音にさらされることで起こる難聴を「騒音性難聴」あるいは「音響性難聴(音響外傷)」といいます。騒音性難聴は主に、職場で工場の機械音や工事音などの騒音にさらされることで起こります。一方、音響性難聴は、爆発音あるいはコンサート・ライブ会場などの大音響などにさらされるほか、ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聞き続けることによって起こります。後者は「ヘッドホン難聴」あるいは「イヤホン難聴」と呼ばれ、近年、特に問題視されています。
WHO(世界保健機関)では、10億人もの世界の若者たち(12~35歳)が、個人用オーディオ機器、バー、音楽イベント、スポーツイベントなどによる音響性難聴のリスクにさらされているとして警鐘を鳴らしています[1]

ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)は、じわじわと進行し、少しずつ両方の耳の聞こえが悪くなっていくため、初期には難聴を自覚しにくいことが特徴です。他の症状として、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴りを伴う場合があります。重症化すると聴力の回復が難しいため、そのような耳の違和感に気づいたら早めに受診することが大切です。

ヘッドホン難聴の原因

耳から入った音は、内耳の蝸牛(かぎゅう)という器官にある「有毛細胞」という細胞で振動から電気信号に変換され、脳に伝わることで聞こえるようになります。
しかし、自動車の騒音程度である85dB(デシベル)以上の音を聞く場合、音の大きさと聞いている時間に比例して、有毛細胞が傷つき、壊れてしまいます。有毛細胞が壊れると、音を感じ取りにくくなり、難聴を引き起こします。WHOでは、80dBで1週間当たり40時間以上、90dBで1週間当たり4時間以上聞き続けると、難聴の危険があるとしています[2]
なお、100dB以上の大音響では急に難聴が生じることもあります。

特にヘッドホンやイヤホンは耳の中に直接音が入るため、周囲に音漏れするほどの大きな音で聞いていたり、長時間聞き続けたりすると、難聴が起こります。

ヘッドホン難聴の治療

有毛細胞が壊れる前であれば、耳の安静を図ることで回復します。そのため、初期には耳栓を使う、定期的に耳を休ませるといった指導が行われます。
大音響などを聞いたあとに急に耳の聞こえが悪くなったときは、突発性難聴の場合と同様に、内服や点滴のステロイド剤による薬物療法が中心になります。血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)やビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などを使うこともあります。
ただし、これらを行っても聴力が十分に改善しないこともあります。

ヘッドホン難聴の予防

WHOでは、ヘッドホンやイヤホンで音楽などを聞くときには、耳の健康を守るために、以下のようなことを推奨しています[1][2]

  • 音量を下げたり、連続して聞かずに休憩を挟んだりする
  • 大きな音を聞く時間を減らす
  • 騒音下でも音量を上げずに済むように、ぴったりフィットした「ノイズキャンセリング機構」により周囲の騒音をカットできるヘッドホン・イヤホンを使用する
  • 音量制限や監視機能のついたスマートフォン・ヘッドホンなどを使うか、音量を確認できるアプリなどを使用し、平均80dB未満に抑える

(最終更新日:2024年11月11日)

堀井 新

堀井 新 ほりい あらた

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

1989年徳島大学医学部医学科卒業。94年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。97年大阪大学医学部耳鼻咽喉科助手。98年よりニュージーランド・オタゴ大学医学部薬理学教室visiting research staffとして、空間認知における前庭系の役割、前庭代償の分子生物学に関する研究に従事。2006年大阪大学医学部耳鼻咽喉科講師、09年市立吹田市民病院耳鼻咽喉科部長、13年国立病院機構大阪医療センター耳鼻咽喉科長、15年より現職。19年新潟大学医歯学総合病院病院長特別補佐、21年同院総合研修部長、22年日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事。Barany Society(バラニー学会:めまい最大の国際学会)Member、Barany Society心因性めまい診断基準作成委員会委員、American Neuro-otological Society(ANS:アメリカ神経耳科学会)Member、日本めまい平衡医学会理事、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事、日本頭頸部外科学会理事、日本耳科学会代議員。2010年Barany Society Young Scientist Award受賞、21年日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科教育・育成功労賞を受賞。専門は、めまい難聴、耳科手術、神経耳科学。

参考文献

  1. WHO
    WHO releases new standard to tackle rising threat of hearing loss
    2022.
    https://www.who.int/news/item/02-03-2022-who-releases-new-standard-to-tackle-rising-threat-of-hearing-loss
  2. WHO
    Questions and answers/Deafness and hearing loss: Safe listening2024.
    https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/deafness-and-hearing-loss-safe-listening