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各国の自殺対策

自殺はさまざまな原因からなる複雑な現象です。自殺対策とは自殺の実態を多角的に分析し、その成果をもとにプリベンション・インターベンション・ポストベンションの各段階において健康関連領域とそれ以外の両者から包括的に取り組み、自殺を考えている人を一人でも多く救うとともに「生きやすい社会」を築いていこうとするものです。

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WHOは「世界中で自殺が重大な問題であるとの認識が欠如しており、多くの社会ではこの問題を議論することもタブーとされており、また自殺予防のために何を取り組めば良いかが不明確であることから、自殺予防は十分に取り組まれていない」として「自殺予防のためには、健康関連領域外からの介入も必要なことは明らかであり、健康関連領域とそれ以外の両者による革新的、包括的な多領域からのアプローチが必要である」という立場から、世界自殺予防戦略(SUPRE: Suicide Prevention)を掲げて活動しています。

フィンランドの自殺予防国家戦略では、1990年には人口10万人対30.4と高かった自殺死亡率が、2002年には人口10万人対21.1となり約30%減少するという成果をあげました。これは国立公衆衛生院(KTL)が1987年に実施した心理学的剖検の結果をもとに、国立福祉健康研究開発センター(STAKES)が中心となって対策を進めたことから、医療モデルと地域モデルが緊密な関連を持って包括的な対応がなされた事例と考えられます。

アメリカにおける自殺対策は、「全集団」「リスク集団」「ハイリスクな特定個人」という3つの介入対象について、介入すべき生物学的・心理社会的リスク要因、環境リスク要因、社会文化的リスク要因ごとに、効率的な介入計画を策定しています。

英国では、政府の白書『命を救おう:我らがより健康な国 Saving lives: Our Healthier Nation (OHN)』と共に2010年までに自殺者を20%減少させると言う目標に向けて、自殺予防戦略を2002年に発表しました。英国の自殺予防戦略では、「包括性」「エビデンスに基づくこと」「明確性」「評価」の4つの理念のもとで、「自殺に用いられる方法や設備・構造の減少」「ハイリスク者のリスク軽減」「こころの健康づくり」「良質な報道」「研究」「モニタリング」という6つのゴールを定め、それぞれに行動目標を立てています。

ニュージーランドでは、1990年代には青少年自殺予防戦略が実施されていましたが、2000年には全ての年齢に対応する新たな自殺予防への取組みが始まりました。まず、先行研究(エビデンス)のレビューが行われ、その結果得られた科学的根拠を基に草案が作成されました。その後広く意見を募集し検討がなされ、2006年にニュージーランド自殺予防戦略2006-2016として発表し、実施されています。

日本では、自殺対策基本法(2006)に基づいて、自殺総合対策大綱(2007)が閣議決定されました。その基本的考え方には、「1. 社会的要因も踏まえ総合的に取り組む」「2. 国民一人ひとりが自殺予防の主役となるよう取り組む」「3. 自殺の事前予防、危機対応に加え未遂者や遺族等への事後対応に取り組む」「4. 自殺を考えている人を関係者が連携して包括的に支える」「5. 自殺の実態解明を進め、その成果に基づき施策を展開する」「6. 中長期的視点に立って、継続的に進める」こととして、 世代別の自殺の特徴に応じて対策に取り組むことを示しています。

『自殺対策』とは、自殺がさまざまな原因からなる複雑な現象であることを踏まえて、その実態の分析をもとに身近な自殺予防から取り組み、「生きやすい社会」を築いていくものです。

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神保健計画部 / 自殺予防総合対策センター 竹島 正

参考文献

  1. 内閣府
    平成19年度版自殺対策白書
    2008
  2. 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター
    「いきる」
    http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/