厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

解離性同一症 / 解離性同一性障害(かいりせいどういつしょう / かいりせいどういつせいしょうがい)

一人の人間の中に全く別の性別、性格、記憶などをもつ複数の人格が現れる神経症。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

解離性同一症とは、かつて多重人格障害と呼ばれた神経症で、子ども時代に適応能力を遥かに超えた激しい苦痛や体験(児童虐待の場合が多い)による心的外傷(トラウマ)などによって一人の人間の中に全く別の人格(自我同一性)が複数存在するようになることをさします。

解離とは、記憶・知覚・意識といった通常は連続してもつべき精神機能が途切れている状態で、軽いものでは読書にふけっていて他人からの呼びかけに気付かないことなどが当てはまります。この解離が、非常に大きな苦痛に見舞われたときに起ることがあり、実際に痛みを感じなくなったり、苦痛を受けた記憶そのものが無くなることがあります。これは、苦痛によって精神が壊れてしまわないように防御するために、痛みの知覚や記憶を自我から切り離すことを無意識に行っていると考えられています。
解離性同一性症はこの解離が継続して起こることによると考えられています。

長い期間にわたり激しい苦痛を受けたり、何度も衝撃的な体験をすると、その度に解離が起こり、苦痛を引き受ける別の自我が形成されてしまい、その間の記憶や意識をその別の自我が引き受けて、もとの自我には引き継がれず、それぞれの自我が独立した記憶をもつようになることが発生の原因と考えられています。

他人から見ると、外見は同じ人であるのに、まったく連続しない別の人格がその時々で現れます。性格や口調、筆跡までもが異なりますので、性格の多面性とは別のものであることに注意する必要があります。

発生の原因や進行過程など研究途上のため、治療法が確立していないのが現状です。

(最終更新日:2021年1月22日)

⻄ ⼤輔

⻄ ⼤輔 にし だいすけ

東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野 教授

2000年九州大学医学部卒業。2010年九州大学大学院医学研究院精神病態医学専修生満了。医師、博士(医学)。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、社会医学系専門医・指導医。2018年より東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野准教授。2021年より国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所公共精神健康医療研究部部長。2022年より現職。