脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態をいう。最新のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)では、神経発達障害/神経発達症とも表記される。
DSM-5では発達障害は、知的障害(知的能力障害)、コミュニケーション障害、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)、学習障害(限局性学習症、LD)、発達性協調運動障害、チック症の7つに分けられています[1]。一般的には、乳幼児から幼児期にかけて、特徴的な症状を呈するものを言います。ただし小児期に症状が目立たず、学齢期や思春期あるいは成人に至って、学校や職場で問題が顕在化することもあります。
発達障害の場合、本人の怠慢や家族のしつけ・環境などが原因ではなく、基本的に脳の機能の障害から起こります。「発達障害者支援法(2016年改正)」では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています[2]。
発達障害の代表的なものとして、自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害があげられますが、同じ診断名でも、知的障害の有無、子どもの個性や発達の状況、年齢、置かれている環境などの様々な要因によって多彩な症状を呈します。また、自閉スペクトラム症とADHDが、あるいはADHDと学習障害が重なり合うなどの点も特徴です。経過中に、精神疾患などを呈するなど併存症、二次障害にも注意が必要となります。正確な診断ができる専門医が比較的少ないため、医療機関を含めて様々な専門機関への相談が大切です。最近はとくに、顕在化しにくい発達障害として、吃音、チック症、トゥレット症候群、発達性協調運動障害、読み書き障害が注目されています。
2016年度から全国で「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」が始まりました。国立精神・神経医療研究センターでは基盤研修として「発達障害支援医学研修」と「発達障害地域包括支援研修」を開催しています。そして初診待機の問題を解消する方策が今後、重要な課題となっています。
(最終更新日:2020年5月12日)