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ネグレクト(ねぐれくと)

幼児・高齢者などの社会的弱者に対し、その保護・養育義務を果たさず放任する行為のこと。最近は、本人自身の基本ニーズ(衛生面、服飾面、食事など)を顧みない行為について、セルフ・ネグレクトと称することもある。

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幼児・児童・高齢者・障害者などに対し、その保護、世話、養育、介護などを怠り、放任する行為のことをいいます。

身体的・精神的・性的虐待とならぶ虐待のひとつであり、日本では特に子どもへの「育児放棄」を指すことが多いようです。近年では高齢者に対して世話・介護を怠るネグレクトも増加しており、それぞれ「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」(2000年施行・2007年改正)、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」(2006年施行・2014年改正)に明確に定義されています。

ネグレクトはその状況により、物理的には問題がないのに保護を放棄する「積極的ネグレクト」と、知識・経済力の不足や疾患のために保護ができない「消極的ネグレクト」に分けられますが、基本的には保護者の意識が対象に向かっていない状態といえます。

子どもの場合、一人で長期間放置したり、成長に必要不可欠な食物を与えなかったりする「身体的ネグレクト」、予防接種や病気の治療を受けさせない「医療的ネグレクト」、情緒的支援をしない「情緒的ネグレクト」、学校へ入学させない、出席させない「教育的ネグレクト」などがあり、幼少時期にこういったネグレクトに晒された場合、適切な親子関係・対人関係が築かれないために、将来の人格形成などに重大な影響を及ぼすと言われています。

なお、ネグレクトなどの虐待を受けている可能性がある子どもを発見した場合、地域の児童相談所などの児童保護部局にすみやかに届けることが義務づけられています。また、保護責任を怠っていたことが明らかになった場合や、それにより子どもが死傷した場合は、保護責任者が刑法により処罰の対象となります。
ネグレクトを受けている(受けた)子どもは、疲れている様子や空腹、身体的外傷、情緒の不安定さなどが見受けられることがありますが、一見してまったく正常にみえることもあります。ほんの些細な症状、サインに気づけるかどうかが重要です。

(最終更新日:2020年5月12日)

稲垣 真澄 いながき ますみ

鳥取県立鳥取療育園 園長 / 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・客員研究員

1984年鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科、鳥取県立中央病院小児科、国立療養所西鳥取病院小児科、北九州市立総合療育センター小児科を経て、1993年より国立精神・神経センター精神保健研究所知的障害部、2010年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的障害研究部(現知的・発達障害研究部)部長。2020年4月より現職。

加賀 佳美 かが よしみ

山梨大学医学部小児科講師

1993年山梨医科大学医学部(現山梨大学医学部)卒業。1999年医学博士取得。山梨大学医学部附属病院小児科入局後、関連病院等研修、米国University of Connecticut Medical School留学、国立病院機構甲府病院小児科勤務を経て、2016年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部知的障害研究室長。2020年4月より現職。