健康日本21(第2次)

参考資料

健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料

第1章 現状

1. これまでの健康増進対策の沿革

健康増進(Health Promotion)の考え方は、国際的には、もともと1946年にWHO(世界保健機関)が提唱した「健康とは単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態を指す」という健康の定義から出発している。その後、1970年代になると、健康増進は、疾病とは対比した理想的な状態、すなわち健康を想定し、それを更に増強することを意味する概念的な定義がなされ(ラロンド報告)、また、米国のHealthy Peopleで応用された際には、個人の生活習慣の改善を意味している。そして、1980年代以降、健康増進はもう一度捉えなおされ、個人の生活習慣の改善だけでなく、環境の整備を合わせたものとして改めて提唱された(ヘルシーシティ)。このように、健康増進という考え方は時代によって内容が変遷してきたといえる。
我が国においては健康増進に係る取組として、「国民健康づくり対策」が昭和53年から数次にわたって展開されてきた。

2. 我が国の健康水準

日本では、第二次世界大戦後、生活環境の改善や医学の進歩によって感染症が激減する一方で、がんや循環器疾患などの生活習慣病が増加し、疾病構造は大きく変化してきた。健康状態を示す包括的指標である「平均寿命」について見ると、我が国は、世界で高い水準を示しており、特に女性は昭和60年から今日まで、世界一の水準を示している。
こうした成果は、日本の高い教育・経済水準、保健・医療水準、生活習慣の改善に支えられ、国民全体の努力によって成し遂げられたと考えられる。例えば、世界的に大きな健康課題となっている「肥満」についても、多くの国においてここ20年間でその割合が著しく増加しているが、日本ではその増加が抑制されている。また、今後さらに平均寿命は伸長し、将来推計では、2060年には男性で84.19年、女性で90.93年に到達すると予測されている。

3. 人口減少社会における健康増進対策の意義

21世紀の日本社会は、疾病及び加齢による負担が極めて大きくなると考えられる。国民医療費は年々増加し、平成21年度で過去最高の36兆67億円に達し、年齢階級別では、65歳以上が19兆9479億円(55.4%)となっている。一方、生活習慣病は、現在、国民医療費(一般診療医療費)の約3割、死亡者数の約6割を占めている。また、要支援者及び要介護者における介護が必要となった主な原因についても、脳血管疾患をはじめとした生活習慣病が3割を占めるとともに、認知症や、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒で5割を占める。

第2章 次期国民健康づくり運動に向けた課題

健康日本21最終評価を踏まえた課題

健康日本21の評価は、その評価を平成25年度以降の運動の推進に反映させることとし、平成23年3月から「健康日本21評価作業チーム」を計6回開催し、評価作業を行った。
健康日本21では9分野の目標(80項目、うち参考指標1項目及び再掲21項目を含む。)を設定しており、これらの目標の達成状況や関連する取組の状況の評価などを行った。

第3章 健康日本21(第2次)の基本的な方向

1. 10年後を見据えた目指す姿について

現行の健康日本21の運動期間は、平成12年度から平成24年度までの12年間としているが、健康日本21は、国民、企業等に健康づくりの取組を浸透させていき、一定程度の時間をかけて、健康増進の観点から、理想とする社会に近づけることを目指す運動である。そこで、新たな国民健康づくり運動プランの検討を開始するに当たり、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会(以下「部会」という。)及び部会の下に設置された次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会(以下「専門委員会」という。)では、10年後を見据えた目指す姿や基本的方向性についての議論を行った。

2. 基本的な方向について

これらの意見を踏まえ、部会及び専門委員会では、目指すべき姿を、全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とし、健康日本21(第2次)の基本的な方向として、①健康寿命の延伸と健康格差の縮小、②主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防、③社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上、④健康を支え、守るための社会環境の整備、⑤栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善、の5つを提案する。

第4章 目標の設定

1. 目標の設定と評価

部会及び専門委員会では、分野ごとの個別目標や目標値を設定することに先立って、目標の設定に関する基本的な考え方について議論を行ってきた。

2. 具体的目標

(1) 健康寿命の延伸と健康格差の縮小

健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義される。健康日本21では、健康寿命の延伸ということが目的の1つに位置付けられていた。しかし当時は、健康寿命の概念や算定方法などが十分明確にはなっておらず、健康寿命に関する具体的な数値や目標を掲げるまでに至らなかった。一方、この間の研究の進展により、健康寿命の概念や算定方法に関する一定の合意が得られてきた。健康日本21(第2次)においては、健康寿命に関する現状値を示すとともに、目標に関する考え方を示すこととする。

(2) 主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底

我が国の主要な死亡原因であるがんと循環器疾患に加え、患者数が増加傾向にあり、かつ、重大な合併症を引き起こす恐れのある糖尿病や、死亡原因として急速に増加すると予測されるCOPDへの対策は、国民の健康寿命の延伸を図る上で重要な課題である。

(3) 社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標

少子高齢化が進む中で、健康寿命の延伸を実現するには、生活習慣病を予防するとともに、社会生活を営むための機能を高齢になっても可能な限り維持していくことが重要である。社会生活を営むために必要な機能を維持するために、身体の健康と共に重要なものが、こころの健康である。その健全な維持は、個人の生活の質を大きく左右するものであり、自殺等の社会的損失を防止するため、全ての世代の健やかな心を支える社会づくりを目指す。また、将来を担う次世代の健康を支えるため、妊婦や子どもの健康増進が重要であるほか、高齢化に伴う機能の低下を遅らせるためには、高齢者の健康に焦点を当てた取組を強化する必要がある。

(4) 健康を支え、守るための社会環境の整備

人々の健康は、社会経済的環境の影響を受けることから、健康に関心を持ち、健康づくりに取り組みやすいよう、健康を支える環境を整備するとともに、時間的又は精神的にゆとりのある生活の確保が困難な人や健康づくりに関心のない人なども含めて、社会全体が相互に支え合いながら、健康を守るための環境を整備することが必要である。
近年、社会における相互信頼の水準や相互扶助の状況を意味するソーシャルキャピタルや人間関係を通した支援を意味するソーシャルサポートと健康との関連に関する報告がみられるとともに、健康格差に関する研究が進み、国内外でその存在が指摘されている。また、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生、その復旧や復興においては、家族や地域の絆や助け合いの重要性が再認識されることとなった。健康づくりへの取組は、従来、個人の健康づくりへの取組が中心だったが、今後は、個人の取組では解決できない地域社会の健康づくりに取り組むことが必要となる。

(5) 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善に関する目標

生活習慣病の発症を予防し、健康寿命を延伸するためには、国民の健康の増進を形成する基本的要素となる栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康に関する生活習慣の改善が重要である。

第5章 次期国民健康づくり運動の推進に向けて

1. 地方自治体における健康増進に向けた取組の推進
2. 多様な分野における連携(推進体制)
3. 周知・広報戦略