メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。単に腹囲が大きいだけでは、メタボリックシンドロームにはあてはまりません。
日本人の死因の第2位は心臓病、第4位は脳卒中です[1]。この2つの病気は、いずれも動脈硬化が原因となって起こることが多くなっています。動脈硬化を起こしやすくする要因(危険因子)としては、高血圧・喫煙・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)・肥満などがあります。これらの危険因子はそれぞれ単独でも動脈硬化を進行させますが、危険因子が重なれば、それぞれの程度が低くても動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中の危険が高まることがわかっています。
これと似たような病態は、以前から「メタボリックシンドローム」のほか、「シンドロームX」「インスリン抵抗性症候群」「マルチプルリスクファクター症候群」「死の四重奏」などとも呼ばれていました。1999年に世界保健機関(WHO)は、このような動脈硬化の危険因子が組み合わさった病態をインスリン抵抗性の観点から整理し、メタボリックシンドロームの概念と診断基準を提唱しました[2]。
その後、さまざまな機関がそれぞれの診断基準を提唱したため、メタボリックシンドロームの考え方にはいろいろなものがあります。また国によっても異なります。大きく分けて、危険因子の重複を基盤にする考え方[3][4]と、インスリン抵抗性や内臓脂肪を基盤とした考え方[5][6]とがあります。世界的には危険因子の重複を基盤にする考え方が主流となっていますが、日本では、内臓脂肪を基盤とした考え方を採用しています[6]。
これは、肥満のうちでも、おなかの内臓に脂肪がたまり腹囲が大きくなる「内臓脂肪型肥満(内臓肥満)」が、高血圧や糖尿病、脂質異常症などをひきおこしやすくし、これら内臓肥満と高血圧や糖尿病、脂質異常症が重複し、その数が多くなるほど、動脈硬化を進行させる危険が高まるという考え方です。
日本では「特定健康診査・特定保健指導」の制度の中で、この考え方をとりいれています。特定健康診査は「メタボ健診」などと呼ばれることもありますが、メタボリックシンドロームだけを見つけるために行っているわけではなく、広く動脈硬化を予防するための検査が含まれます。なお、メタボリックシンドロームの診断基準と特定保健指導の基準とは少し異なります。
メタボリックシンドロームの用語は、メディアなどで俗に「メタボ」と省略されて使われることもあり、2000年代後半ごろより生活のなかでも耳にすることが多くなってきました。しかしながら、上記のような正しい意味で用いられず、単に太っていることや、腹囲が大きいという意味で誤用されていることもよくありますので、正しい意味を理解することが大切です。
(最終更新日:2022年11月18日)