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禁煙のおくすりってどんなもの?

禁煙の離脱症状は、禁煙開始から2~3日をピークに10日から2週間程度続きます。つらいと思われがちの離脱症状も禁煙補助薬を用いることで緩和され、比較的楽に禁煙できるようになります。日本では禁煙外来で貼り薬のニコチンパッチと飲み薬のバレニクリンが処方されます。また一般医療用医薬品としてニコチンガムとニコチンパッチが薬局・薬店で市販されています。

*バレニクリンの一部のロットに不純物が混入したことが判明し、2021年6月から、バレニクリンの出荷停止が続いています。出荷再開までは、もう一つの医療用医薬品であるニコチンパッチを使って健康保険による禁煙治療を受けられます。禁煙外来にご確認、ご相談ください。

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日本では2006年から禁煙治療に健康保険が使えるようになりました。禁煙外来で使える禁煙補助薬として、貼り薬のニコチンパッチとニコチンを含まない飲み薬のバレニクリンがあります。これらの薬剤はいずれもニコチン離脱症状を和らげる効果があります。また、バレニクリンはたばこを吸った時の満足感を抑える作用もあります。加えて、一般医療用医薬品として、ニコチンガムとニコチンパッチが薬局・薬店で市販されています。

禁煙補助薬を利用すると、ニコチンガムでは1.5倍、ニコチンパッチは1.6倍、バレニクリンは2.2倍、自力の禁煙に比べて禁煙成功率が高まると報告されています[1]。日本の禁煙外来でも、禁煙補助薬が使用されることが多いですが、全国的な規模での治療成績の報告(2017年度調査)によると、12週間の禁煙治療を5回すべて受けた人では、約8割が治療終了時点で少なくとも4週間以上の禁煙に成功し、約5割が治療終了後9ヵ月間の継続禁煙に成功しています。

薬局・薬店で一般用医薬品のニコチンパッチやニコチンガムを購入して禁煙するという選択肢もありますが、ニコチンパッチの場合、医療用医薬品のニコチンパッチと比べて用量が少なく、喫煙本数が多い人ではニコチンの補充が不十分となる可能性があります。禁煙外来で処方されるニコチンパッチの場合、一般用医薬品のニコチンガムを追加することができます。その場合、禁煙成功率はバレニクリンと同程度になると報告されています[1]

以下にそれぞれの禁煙補助薬について解説します。

1.【ニコチンガム】

ニコチンガム

薬局・薬店で購入できます。
ニコチンガムは口腔粘膜からニコチンを吸収させるタイプのニコチン製剤です。短時間で効果が出るので、急なニコチン欲求に対応できます。

噛み方

  1. ピリッとした味を感じるまでゆっくりと15回程度噛みます。
  2. ほほと歯茎の間にしばらく置きます。(約1分以上)
  3. 上記を約30分~60分間繰り返した後、紙などにつつんで捨てます。
  4. 唾液はニコチンを含むため飲み込まないようにしましょう。

2.【ニコチンパッチ】

ニコチンパッチ医療用医薬品(3種類)

医療用医薬品(3種類)

ニコチンパッチ一般医薬品(2種類)

一般医薬品(2種類)

薬局・薬店で購入できます。
禁煙外来でも処方できます。禁煙外来の場合は、薬局では販売されるものよりも大きいサイズを処方できます。
ニコチンパッチは、身体に貼り、皮膚からニコチンを吸収するタイプのニコチン製剤です。持続的にニコチンを入れるので離脱症状を弱めます。

貼り方

  1. 朝起きてすぐに上腕、背中、おなかのいずれかに貼ります。
  2. 薬局で販売しているニコチンパッチは寝る前にはがします。禁煙外来で処方されたニコチンパッチは朝まで貼ります。

※かゆみなどが出た場合は、薬剤師・医師に相談しましょう。

3.【バレニクリン】

バレニクリン

禁煙外来で処方されます。
脳の中のニコチン受容体に作用する、ニコチンを含まないタイプの禁煙補助薬です。
離脱症状を緩和するだけでなく、喫煙による満足感を抑制する作用があります。

飲み方

  1. 禁煙開始日7日前から食後に服用します。
    1-3日は0.5mgを1日1錠、4-7日は0.5mgを1日2錠(朝夕食後)、8日以降は1mgを1日2錠(朝夕食後)服用します。服用開始7日間は喫煙しながら服用します。
  2. 服用後8日目から禁煙してください。

(最終更新日:2024年03月06日)

谷口 千枝

谷口 千枝 たにぐち ちえ

愛知医科大学看護学部 成人看護学(療養生活支援) 准教授

2004年国立病院機構名古屋医療センター禁煙外来勤務、13年椙山女学園大学看護学部、18年愛知医科大学看護学部成人看護学(療養生活支援)講師を経て、2020年より現職。

中村 正和

中村 正和 なかむら まさかず

公益社団法人 地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター センター長

1980年自治医科大学卒業。労働衛生コンサルタント、日本公衆衛生学会認定専門家、厚生科学審議会専門委員。専門は予防医学、ヘルスプロモーション、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策とNCD(生活習慣病)対策。厚労科研研究班代表者(2007-21年度)として、たばこ政策研究に従事。研究成果をもとに禁煙治療の保険適用、たばこ価格政策、健康日本21における喫煙の数値目標の設定、特定健診における禁煙支援の強化等の政策実現に貢献。

参考文献

  1. 日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会
    禁煙治療のための標準手順書(第8.1版).
    2021.
    https://www.jrs.or.jp/information/jrs/publication/20210916112925.html