厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

突発性難聴について

突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患です。40~60歳代の働き盛りに多くみられ、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。聴力を回復させるには、早めに治療を開始することが重要です。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

突発性難聴とは

突発性難聴は、突然、左右の耳の一方(ごくまれに両方)の聞こえが悪くなる疾患です。音をうまく感じ取れない難聴(感音難聴)のうち原因がはっきりしないものの総称で、幅広い年代に起こりますが、特に働き盛りの40~60歳代に多くみられます。

前日は問題なかったにもかかわらず、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくい、あるいは電話の音が急に聞こえなくなるなど、前触れなく突然に起こることが特徴です。

聞こえにくさは人によって異なり、まったく聞こえなくなる人もいれば、低音だけが聞こえなくなる人もいます。後者では、日常会話に必要な音は聞こえているため、難聴に気づくのが遅れてしまいがちです。

聴力が改善したり、悪化したりを繰り返すといった症状の波はありません。

また、難聴の発生と前後して、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、めまい、吐き気などを伴うケースも多く、耳鳴りで受診したら突発性難聴だったという人もいます。難聴やめまいが起こるのは1度だけで、メニエール病のように繰り返すことはありません。

突発性難聴は、以上のような症状を問診で確認したり、さまざまな聴力検査や画像診断を行って診断されます。発症後すぐ治療を受けないと、難聴や頑固な耳鳴りが残ったり、聴力を失うこともあるため、早めの受診と治療開始が大切です。

突発性難聴の原因

音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こります。有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染が原因であると考えられていますが、まだ明らかになっていません。

ストレスや過労、睡眠不足などがあると起こりやすいことが知られています。また、糖尿病が影響しているともいわれています。

突発性難聴の治療

治療は、内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬による薬物療法が中心になります。また、血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)やビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などを使うこともあります。ストレスの影響が考えられるときは、安静にして過ごします。

十分に回復しない場合や全身投与が難しい場合は、耳の中にステロイドを注入する「ステロイド鼓室内注入療法」が行われることがありますが、その効果に対する評価は定まっていません。

発症後1週間以内に、それらによる適切な治療法を受けることで、約40%の人は完治し、50%の人にはなんらかの改善がみられます。ただし、治療開始が遅れれば遅れるほど治療効果が下がり、完治が難しくなってしまうので、注意が必要です。

(最終更新日:2024年11月12日)

堀井 新

堀井 新 ほりい あらた

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

1989年徳島大学医学部医学科卒業。94年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。97年大阪大学医学部耳鼻咽喉科助手。98年よりニュージーランド・オタゴ大学医学部薬理学教室visiting research staffとして、空間認知における前庭系の役割、前庭代償の分子生物学に関する研究に従事。2006年大阪大学医学部耳鼻咽喉科講師、09年市立吹田市民病院耳鼻咽喉科部長、13年国立病院機構大阪医療センター耳鼻咽喉科長、15年より現職。19年新潟大学医歯学総合病院病院長特別補佐、21年同院総合研修部長、22年日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事。Barany Society(バラニー学会:めまい最大の国際学会)Member、Barany Society心因性めまい診断基準作成委員会委員、American Neuro-otological Society(ANS:アメリカ神経耳科学会)Member、日本めまい平衡医学会理事、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事、日本頭頸部外科学会理事、日本耳科学会代議員。2010年Barany Society Young Scientist Award受賞、21年日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科教育・育成功労賞を受賞。専門は、めまい難聴、耳科手術、神経耳科学。

参考文献

  1. 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金
    疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
    難治性聴覚障害に関する調査研究報告書