厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

肥満と肥満症

肥満は体重が多い状態であり、日本ではBody Mass Index(BMI)が25kg/m2以上の状態を指します。肥満に治療が必要な病気などが合併した状態を肥満症といいます。肥満だけでは治療の対象とはなりません。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI=体重[kg]/身長[m]2)が25kg/m2以上のものをいいます。それに対して、肥満症とは、肥満に起因・関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、減量を必要とする疾患をいいます。具体的には、BMIが25kg/m2以上で、下記の健康障害を有する場合が肥満症です。また内臓脂肪型肥満症の場合は、将来、健康障害の合併が予測されることから、下記の健康障害がなくても肥満症と診断されます。[1]


肥満に起因ないし関連する健康障害〈肥満症の診断に必要な健康障害〉
1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2. 脂質異常症
3. 高血圧
4. 高尿酸血症・痛風
5. 冠動脈疾患
6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
8. 月経異常・女性不妊
9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10. 運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
11. 肥満関連腎臓病

肥満だけでは治療の対象とはなりませんが、世界的に肥満と健康リスクとの関連は明らかで[2]、特に虚血性心疾患に関しては、日本の研究でも一致して示されています[3]。しかし、これらの健康リスク増加の多くは、BMIが30kg/m2以上の人で強くみられています。

日本人の観察研究では、BMIと総死亡との関連はU字型であり、太りすぎ(30kg/m2以上)でも、やせすぎ(19kg/m2未満)でも死亡率の上昇と関連し、BMIが25kg/m2前後(21~27kg/m2)の人が死亡リスクが低いことが知られています[4]

しかしながら、BMIが25~27kg/m2を超える状態が長く続くと、高血圧や糖尿病、脂質異常症などになりやすくなります[1]。体重に気をつけるとともに、毎年特定健診を受診して、健康状態を確認することが重要です。

(最終更新日:2024年10月24日)

山岸 良匡

山岸 良匡 やまぎし かずまさ

順天堂大学大学院医学研究科 公衆衛生学 教授

茨城県出身。2000年筑波大学医学専門学群(現・医学類)卒業、03年筑波大学大学院博士課程修了。医師、博士(医学)、社会医学系専門医・指導医。筑波大学講師、准教授、ミネソタ大学客員講師などを経て、19年より筑波大学医学医療系社会健康医学教授。2024年より現職。循環器疾患などの生活習慣病の予防実践と疫学研究が専門。

参考文献

  1. 日本肥満学会.肥満症診療ガイドライン2022.
    http://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html
  2. Prospective Studies Collaboration. Body-mass index and cause-specific mortality in 900 000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies. Lancet 2009;373:1083-96.
  3. Yatsuya H, Toyoshima H, Yamagishi K, Tamakoshi K, Taguri M, Harada A, Ohashi Y, Kita Y, Naito Y, Yamada M, et al. Body mass index and risk of stroke and myocardial infarction in a relatively lean population: meta-analysis of 16 Japanese cohorts using individual data. Circ Cardiovasc Qual Outcomes 2010;3:498-505.
  4. Sasazuki S, Inoue M, Tsuji I, Sugawara Y, Tamakoshi A, Matsuo K, Wakai K, Nagata C, Tanaka K, Mizoue T, Tsugane S; Research Group for the Development and Evaluation of Cancer Prevention Strategies in Japan. Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies. J Epidemiol. 2011;21(6):417-30