厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

果物

果物は水分・ビタミン・ミネラル・食物繊維を含みます。野菜と異なる点はブドウ糖や果糖の糖質を多く含むことです。果物を食べすぎると、糖質の過剰摂取により中性脂肪の増大や肥満をきたすおそれがあります。果物に含まれる栄養素と果糖の栄養について解説します。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

果物の栄養成分的特徴 ―果物と野菜のちがい―

果物と野菜、どちらもビタミン・ミネラル・食物繊維の給源となりますが、実際には「果物=野菜」ではありません。すなわち「野菜の代わりに果物をとる」というのは通用しないのです。とれるビタミンやミネラル、食物繊維の種類も違いますし、果物は野菜に比べて糖質や有機酸(クエン酸・酒石酸・リンゴ酸・コハク酸)が多くなります。

栄養成分 果物 野菜
水分 80-90% 85-95%
糖質 果糖(フルクトース)
ブドウ糖(グルコース)
食物繊維 プロトペクチン(未熟)
ペクチン(適熟)
セルロース
ヘミセルロース
ペクチン
ビタミン アスコルビン酸(ビタミンC) 緑黄色野菜:
カロテン(プロビタミンA)
アスコルビン酸(C)
チアミン(B1)
リボフラビン(B2)
葉菜類:
葉酸
トコフェロール(E)
ミネラル カリウム カリウム
カルシウム
有機酸 クエン酸
リンゴ酸
酒石酸
糖質
果物にはブドウ糖・果糖・ショ糖という糖質が含まれています。糖質の組成は果物の種類によって異なりますが、糖質は原則「1g=4kcal」のエネルギー源となります。
食物繊維
果物に含まれる食物繊維は、未熟な果実ではプロトペクチンという不溶性食物繊維ですが、適熟な果実のペクチンは水溶性食物繊維です。果物に含まれるペクチンが有機酸や糖によってゼリー化したものがジャムです。果物を砂糖と一緒に加熱すると、ペクチンが溶け出し、クエン酸・リンゴ酸などの酸と反応してゲル化します。
水溶性食物繊維は、糖質の消化管での吸収を遅延させて急激な血糖値の上昇を抑える作用があります。またコレステロールの吸収抑制や胆汁酸の吸着・排泄の作用もあり、食物繊維の摂取量の多い方が心疾患の発症リスクも低いと報告されています。
ビタミン
果物に主に含まれるビタミンはビタミンCです。またミネラルはカリウムが主となります。果物は野菜ほどいろんな種類のビタミンやミネラルがとれるわけではありません。

果糖の栄養

果糖(フルクトース)は、糖質の最小単位である単糖類です。ブドウ糖(グルコース)も単糖類です。砂糖として知られるショ糖(スクロース)は、果糖1分子とブドウ糖1分子が結合した二糖類になります。

果糖の消化・吸収

果糖やブドウ糖は単糖類ですので、これ以上消化は必要ありません。果糖の吸収は糖輸送担体(GLUT5)により濃度勾配を利用した拡散輸送で行われます。ナトリウム-糖共輸送担体(SGLT1)により能動輸送されるブドウ糖に比べると、果糖の吸収は遅いといえます。

果糖の代謝

吸収された果糖は門脈を経て肝臓へ運ばれ、フルクトキナーゼという酵素の作用によってフルクトース-1-リン酸となり、ブドウ糖の解糖系に組み込まれます。フルクトキナーゼはインスリンの影響を受けないので、果糖はブドウ糖より早く利用されます。実際には果糖が単独で体内に存在するわけではないので、相互に作用しあいながら利用されます。

果糖と血糖値・中性脂肪

血糖値は血中のブドウ糖の濃度なので、果糖が直接的に血糖値を上げることはありません。しかし糖新生によりブドウ糖に変換されます。過剰な糖質は肝臓でトリアシルグリセロール(中性脂肪)に合成され、高中性脂肪血症となり肥満をきたすおそれがあります。

果物の適切なとり方

果物は水分・ビタミンC・カリウム・食物繊維の補給に役立ちますが、過剰に摂取すると果糖の過剰摂取により中性脂肪の増大や肥満をきたすおそれがあります。食べすぎに注意しましょう。りんご半分・バナナ1本・いちご16粒が約80kcalに相当します。缶詰の果物は糖分の高いシロップにつけてある分、さらに高エネルギーとなります。

(最終確認日:2018年10月26日)

五味 郁子

五味 郁子 ごみ いくこ

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科 教授

大学卒業後、オーストラリア・シドニーで臨床栄養士インターンシップを経験。現在は管理栄養士の実践的な教育に取り組んでいる。専門は、高齢者、栄養ケア・マネジメント、臨床栄養、栄養教育。ベトナム国ハノイの管理栄養士栄養士養成・活動支援にも携わっている。