厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

e-ヘルスネット

マロリーワイス症候群(まろりーわいすしょうこうぐん)

繰り返す激しい嘔吐のために食道に圧が加わり、食道胃接合部付近の粘膜が破れ出血する疾患。

twitterでシェアする

facebookでシェアする

激しい嘔吐を繰り返すと、急激に上昇した腹腔内圧が食道に加わり、食道胃接合部付近(食道下部から胃の入り口=噴門部)の粘膜に裂傷が起こります。この裂傷は粘膜下層まで生じ、粘膜下動脈から出血します。新鮮血の混じった吐血であり、通常は胸痛や腹痛を伴いません。吐血を主訴として来院する上部消化管出血の5%前後を占める頻度の高い疾患です。

誘因としては飲酒が最も多く、これはアルコールが下部食道括約圧(胃内容物が食道へ逆流するのを防ぐ筋肉の圧)を緩めるてしまうため、容易に胃から食道に圧が加わることによるものです。もちろん飲酒後でなくても激しい嘔吐の反復や咳・くしゃみ、排便、分娩後など、急激に腹腔内圧が上昇する状況であれば、発症する可能性があります。
とくに食道裂孔ヘルニアを伴っていると、胸腔内のヘルニア嚢内の圧が胃内圧と同一となり、食道胃接合部付近の食道内と外の圧較差が大きくなり裂傷をきたしやすくなります。上部消化管内視鏡検査では、食道胃接合部付近に1条から数条の縦走する裂傷を認めます。

食道への圧が正常化すればほとんどが自然止血するため、特別な治療は必要とせず保存的に経過観察します。出血が持続する例では、内視鏡的に止血治療をおこないます。予後は良好です。