食習慣の乱れや食事の偏りを見直し、少しずつでも改めることによって、高血圧の予防や治療に結びつけることができます。決して難しいことばかりではありません。無理せずできることから気長に取り組んでみましょう。
高血圧治療の基本は生活習慣の修正(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。
日本人の高血圧の最大の原因は、食塩のとりすぎです。若年・中年の男性では、肥満が原因の高血圧も増えています。飲酒、運動不足も高血圧の原因です。高血圧は喫煙と並んで、日本人にとって最大の生活習慣病リスク要因です。
厚生労働省の健康づくり運動である健康日本21《第2次》では、平成35年(2023年)までの身体活動・運動分野の目標を定めました。これらの目標を達成するためのツールとして厚生労働省健康局より発表されたのが「健康づくりのための身体活動基準2013」です。
身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズムのポイントについて紹介しています。具体的には、代謝性疾患、心血管疾患、運動器障害、精神・神経疾患、一部のがんについて、発症予防・改善のメカニズムを記載しています。
※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。
身体活動・運動を安全に行ううえで確認すべき事項やタイミング、注意点について紹介しています。「運動開始前の健康チェックシート」のほか、運動前、運動中、運動後の体調確認やウォームアップ・クールダウンについても記載しています。
※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。
高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症を有する人を対象とした、身体活動のポイントについて紹介しています。具体的には、基本的な考え方や身体活動の目安、実施するうえでの注意点などを詳しく記載しています。
※本シートは厚生労働省のホームページに掲載されています。
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」とは、厚生労働省が推進する「健康日本21(第三次)」における身体活動・運動分野の取組を推進するため、健康づくりに関わる専門家、政策立案者、職場管理者、その他健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者を対象者として、身体活動・運動に係る推奨事項や参考情報をまとめたものです。
平成29年度~令和元年度 厚生労働科学研究「健康増進施設の現状把握と標準的な運動指導プログラムの開発および効果検証と普及啓発」によって作成された運動プログラムが、リーフレットとしてまとめられています。
特定健診・保健指導は、医療制度改革の一環として取り組まれる生活習慣病予防対策のひとつとして実施されている保健制度です。国保・健保といった保険者に、メタボリックシンドロームに焦点を当てた健診(特定健診)の受診率のアップと、運動・食習慣の改善を通した保健指導によりメタボ該当者やその予備群の減少を義務づけました。保健指導は運動習慣や身体活動の改善が重要な指導内容です。
生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の死因の上位を占める、がんや心臓病、脳卒中は、生活習慣病に含まれます。
2016年に厚生労働省「喫煙の健康影響に関する検討会」にて取りまとめられた「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」の概要について、わかりやすくお知らせします。
脳に血液を送る首の動脈を超音波で簡単に視覚化できる検査。動脈硬化の早期発見や進行具合を確認する。
腎臓や泌尿器の機能障害で尿に必要以上のタンパク質が出てしまうこと。
脳の動脈硬化が進み、脳の血管が詰まったり破れたりする病気の総称。
糖尿病の合併症で腎臓の機能が低下した症状。
尿酸の血中濃度が異常に高まった状態。痛風発作の原因となる。
へその高さで計る腰回りの大きさ。内臓脂肪の蓄積の目安とされ、メタボリックシンドロームを診断する指標のひとつ。
手足の血管に起こる動脈硬化。
冷感・しびれ・歩行時の痛みを感じる。進行すると手足に潰瘍ができて壊死することもある。
動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態。
内腔にプラークがついたり血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなる。
酸素を使い体内の糖質・脂質をエネルギー源とする、筋肉への負荷が比較的軽い運動。
運動を行うことで、障害や疾患の治療を行う療法。
人体に必要なミネラルの一種で、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つ。
人体に必要なミネラルの一種で、浸透圧の調整などの働きをする。主に食塩の形で摂取される。
たんぱく質が分解される過程でできるアミノ酸に似た物質。魚介類や軟体動物に多く含まれ、消化管内でコレステロールの吸収を抑える働きなどを持つ。
食べ物の中に含まれ、人の消化酵素で消化することのできない物質。
整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目され、第6の栄養素といわれることもある。
原因不明で幻覚、妄想、まとまりのない思考や行動、意欲の欠如などの症状を示す精神疾患。
眠り出すと呼吸が止まってしまうため、過眠や高血圧などを引き起こす病気。
外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。その原因となる外的刺激(ストレッサー)とそれに対する私たちの心身の反応(ストレス反応)とを合わせてストレスと呼ばれることもある。
ある病気や状態を引き起こす確率を高める要因のこと。
喫煙はがんをはじめ、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などの呼吸器疾患、2型糖尿病、歯周病など、多くの病気と関係しており、予防できる最大の死亡原因であることがわかっています。
また、喫煙を始める年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、総死亡率が高くなることもわかっています。
「健康日本21(第二次)」とは、2013(平成25)年から行われている国民健康づくり運動のことです[1]。基本方針に基づいて設定された53項目の目標の中で、飲酒(アルコール)に関して3つの目標が設定されています。2022年10月の最終評価では、改善がみられなかった項目もあり、アルコール健康障害対策のさらなる推進が重要視されています。
依存症の危険因子には「1. 女性の方が男性より短い期間で依存症になる」「2. 未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい」「3.遺伝や家庭環境が危険性を高める」「4.家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる」「5.うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める」といったことが知られています。
体の中の脂質のバランスが崩れてしまうことを脂質異常症といいます。アルコールの過剰摂取は、トリグリセリド(中性脂肪)の増加につながり、高トリグリセリド血症を招いて急性すい炎のリスクを高めます。一方、いわゆる善玉コレステロールであるHDLコレステロールもアルコール摂取量の増加にともない増加しますが、過度のアルコール摂取は肥満や高血圧を引き起こすため、適量にとどめたほうがよいでしょう。
適切な飲酒による適量のアルコール摂取は、糖尿病の発生を予防する可能性があります。しかし度を越した過剰なアルコール摂取は高血糖を来たし、それは同時に脂質異常症や高血圧などと相まって脳血管障害・虚血性心疾患の危険因子となります。
健康診断などで、尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合に高尿酸血症と判断されます。成人男性の20%が高尿酸血症であると言われています。高尿酸血症は痛風関節炎だけでなく、腎障害やメタボリックシンドローム、心血管障害とも関連があります。原因のひとつにアルコール摂取があるため、高尿酸血症を指摘されたときにはお酒との付き合い方を見直してみましょう。
アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症にうつ症状が見られる場合やうつ病が先で後から依存症になる場合などいくつかのパターンに分かれます。アルコールと自殺も強い関係があり、自殺した人のうち1/3の割合で直前の飲酒が認められます。
メタボリックシンドロームに関わる高血圧・脂質異常症・高血糖・内臓脂肪の蓄積・脂肪肝には、お酒の飲みすぎが関与している場合が多数見られます。厚生労働省の「健康日本21(第二次)」では、生活習慣病のリスクの高い飲酒量として、男性1日平均40g以上、女性20g以上とし、そのような飲酒者を減らすことを目標としています。また一般的に、週に2日間程度の休肝日を入れることも推奨されます。
適量の飲酒は循環器疾患に保護的に働くといわれています。過度の飲酒は逆に循環器疾患のリスク因子になります。「節度ある適度な飲酒」を守ることが肝要です。また、循環器疾患以外のリスクや持病・体質等も考えると、現在飲酒していない人や飲めない人に対して飲酒を強要しないことも重要です。
口腔は食事や会話、容姿といった人と人とのつながりや言語、非言語的コミュニケーションに欠かすことができない重要な役割を担っています。口腔機能が低下すると食べられる食物の種類や量が制限されるので、栄養のバランスがとりにくくなり、食事の質が悪くなるため、免疫や代謝といった機能の低下から病気にかかりやすく、治癒しにくくなります。
歯周病予防の基本は歯垢がつかないようにすることで、毎日の歯みがきや定期的な歯石除去が有効です。しかし歯周病になった場合は歯科医師や歯科衛生士がもっと専門的に歯の清掃をしたり咬み合わせの調整を行ったりします。また重度の場合は歯ぐきの手術が必要なこともあります。
歯科医療費は高血圧や脳血管疾患よりも高額です。歯科疾患の通院率は他の疾患と比較して高い値を示しています。歯や口の自覚症状を持っている国民は約4割います。
DV被害によって被害者とその子どもには様々な心身の健康障害が引き起こされることがわかっています。例えば被害者には直接的な暴力による怪我の他にも慢性身体疾患への罹患、うつ病やPTSD・アルコール乱用・薬物乱用などが起こり得ます。周囲の人たちには被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していく視点が重要です。
急性心筋梗塞をはじめとする循環器疾患は、老化や高血圧・喫煙・肥満・糖尿病など全身血管の動脈硬化をきたす疾患が原因となっていますが、発症の引き金としてストレスやうつなどの影響が大きいことが知られています。⽣活習慣病予防と同時にこころの健康維持も、循環器疾患の予防のためにとても大切です。
質の悪い睡眠は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることが分かっています。睡眠問題は「睡眠習慣」と「睡眠障害」の問題に分けられます。睡眠習慣については睡眠不足やシフトワークなどによる体内時計の問題、睡眠障害については睡眠時無呼吸と不眠症の問題を取り上げ、それぞれ生活習慣病との関係を明らかにします。
小児の睡眠不足や睡眠障害が持続すると、肥満や生活習慣病(糖尿病・高血圧)、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。
女性の体は「月経」「妊娠・出産」「閉経」を通して、大きなホルモン変化にさらされています。それに伴い睡眠も変調をきたしやすいのです。月経前には日中の眠気、妊娠中には日中の眠気や不眠、出産後は睡眠不足、そして更年期には不眠になりやすいという特徴があります。各ライフステージを分けて理解しておきましょう。
子どもの生活時間の夜型化や睡眠時間の減少は、成長の遅れ・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらします。睡眠を妨げる肥満による睡眠時無呼吸症候群は、子どもにも増えています。適切な睡眠習慣と健康に関する知識を啓発していく必要があります。
昼間の眠気が強く、目覚めていられない場合(過眠症)は要注意です。ナルコレプシーなどの過眠症は、学業・仕事の妨げになるだけでなく、転倒・転落したり、交通事故の当事者となったりと、事故の危険性が高まります。睡眠時無呼吸症候群は放っておくと生活習慣病を悪化させます。検査を受け必要な治療を受けることが大切です。
不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠問題があり、そのために日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠は誰でも経験しますが、自然に改善して再び眠れるようになることが大部分です。ただし、いったん慢性不眠症に陥ると適切な治療を受けないと回復しにくいといわれています。不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・薬の副作用など様々で、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。
健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。
現代生活はシフトワークや長時間通勤・受験勉強・インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険で一杯です。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします。
私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみませんか。
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肥満症や高血圧などの生活習慣病は、環境や生まれつきの遺伝的な要素にも関係していますが、食習慣や運動習慣などの生活習慣にも大きく関わっていることが知られています。「7つの健康習慣」は米国のブレスロー教授が生活習慣と身体的健康度との関係を調査した結果から広く知られるようになりました。
野菜は「健康に良い」と理解していても、意識しなければ十分な量を摂取することができません。1食1皿以上・1日5皿分を食べることを目指しましょう。調理の工夫をしたり、簡単に野菜を多く食べる料理を取り入れてみたりしましょう。またその際には主食・副菜・主菜をそろえた食事を心がけ、調味料などにも工夫をしてみましょう。
健康を維持増進するために必要な栄養素を食事から確保したり、生活習慣病を予防するためには、1日当たり日本酒1合程度までの飲酒量に留め、加えて週1回以上の休肝日を設けることが望まれます。
「栄養3・3運動」は、健やかな毎日のための基本的な食生活のあり方を簡単に示したもので、「3・3」は3食・3色を意味し、毎日、朝・昼・夕の3食と、3色食品群のそろった食事をとるよう勧めています。
多くの若い女性が持つ「やせ願望」やダイエット指向。実はその多くの者がやせる必要がないのに、偏った食生活を送ったり極端なダイエットを繰り返しています。若い女性の「やせ」は多くの健康問題のリスクを高め、さらに若い女性や妊婦の低栄養問題は「次世代の子ども」の生活習慣病のリスクを高めると危惧されています。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満を共通の要因として、高血糖・脂質異常・高血圧を呈する病態で、診断基準のひとつにウエスト周囲径があります。この予防には食事・食生活が重要です。食行動と行動変容の準備状態・食事内容の現状を認識し、目標達成に向けた活動と、やる気が継続できるしかけを自分なりに工夫をすることが大切です。
糖尿病は何らかの原因によって血糖値のコントロールを失い、高血糖状態が継続する病気です。高血糖状態が継続することによって、糖尿病合併症(糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害など)をひき起こします。
糖尿病の食事療法は、血糖値のコントロールを助け高血糖状態が継続することを避けることにより、合併症を予防することを目的に行われるものです。患者さんやその家族が糖尿病の食事療法を理解し計画・実行しやすくするために、食品交換表が作られています。
健康づくりにおいて、肥満の予防は重要な位置づけを持ちます。肥満度の判定にはBMI(Body Mass Index)が用いられますが、同じBMIでもどこに脂肪がついているかで健康への危険性は大きく異なります。肥満のタイプは「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられ、前者の方が生活習慣病を発症するリスクが高いことがわかっています。肥満の予防には、食生活の見直しと併せて継続的に運動を取り入れることにより、さらに効果が期待できるでしょう。
血液中の尿酸が高い状態が高尿酸血症です。痛風や腎結石、尿路結石の原因であるほか、高尿酸血症がある人では、肥満や高血圧、脂質異常症、高血糖を複合的に合併することが多くなっています。
脳血管障害(脳卒中)には、脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。いずれも高血圧が最大の原因です。
喫煙やLDLコレステロールの高値、高血圧、メタボリックシンドロームなどにより心臓の血管の動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こしやすくなります。
血液中の脂質の値が基準値から外れた状態を、脂質異常症といいます。脂質の異常には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)の血中濃度の異常があります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します。
特定健康診査は、いわゆる「健診」のことで、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行います。メタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。
特定保健指導では、特定健康診査の結果に基づき、メタボリックシンドロームの人には「積極的支援」、その予備群には「動機づけ支援」、それ以外の受診者には「情報提供」が行われます。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断されます。
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。単に腹囲が大きいだけでは、メタボリックシンドロームにはあてはまりません。