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喫煙と循環器疾患

喫煙と循環器疾患との関係について、喫煙が原因と言い切れる循環器疾患について、前臨床段階(症状や発病する前の段階の病変がある段階)の動脈硬化、冠状動脈疾患、脳卒中腹部大動脈瘤、が挙げられています。
喫煙によって、血管の壁が損傷を受け細胞の機能不全につながり、血液の成分も血栓形成に傾き、酸素運搬能が低下する(一酸化炭素は酸素と競合します)など複数の要素がこうした喫煙と循環器疾患との関連の背景に存在しており、血管がぼろぼろになる、血液がどろどろになる、というのは、決して食事や運動などだけではなかったのです。

 喫煙と循環器疾患との関係について、経験的には古くから議論があります。例えばアメリカでは紙巻たばこの流行が始まってから、突然死が増えたことを揶揄し、新しい白い紙巻たばこのことを「かんおけのくぎ」と言われたことがあるそうです。

 また、たばこの中には、心臓などの機能へ強い影響を及ぼす成分があることが知られており、そうした心機能特に自律神経系の研究に際しては、「毒であるニコチン」を用いた研究が行われ、ひいては今日の副交感神経の細胞の受容体の一つである、ニコチン性受容体の発見へとつながったといわれています。

 今日一般的に循環器疾患といえば、栄養、食事や運動との関係が懸念されていますが、その背景である疫学研究においては、栄養、食事や運動と循環器疾患との関連を検討する際には、喫煙状態について検討(統計学的に調整)されている場合がほとんどです。このことは、喫煙が循環器疾患への影響が、栄養、食事、運動などとくらべても大きなものかということがうかがえます。

 さて、喫煙と循環器疾患との関係について、実際のところどうでしょうか。アメリカのSGRでは、喫煙によって引き起こされる、つまり喫煙が原因だと言い切れる循環器疾患について、前臨床段階(症状や発病する前の段階の病変がある段階)の動脈硬化、冠状動脈疾患、脳卒中腹部大動脈瘤、が挙げられています。

 この背景として当然ヒトでの観察研究がありますが、それだけではなく、実験レベルなどでも確認されている事実としては、喫煙によって、血管の壁が損傷を受け細胞の機能不全につながること、だけでなく、血液の成分も血栓形成に傾くこと、酸素運搬能が低下すること(一酸化炭素は酸素と競合します)、からだの酸素要求量が増加すること(心機能などが更新するためです)、短期的に血管抵抗が増して血圧が上昇すること、など複数の要素がこうした喫煙と循環器疾患との関連の背景に存在しています。また出産後に採取されたへその緒の血管を検討した結果、喫煙するお母さんからの検体では血管壁の細胞が障害された所見が認められたのに対し、非喫煙のお母さんでは認められないという報告までもがいくつかあります(へその緒は、お母さん側ではなく赤ちゃん側の組織であることに注意してください)。

 このように、血管がぼろぼろになる、血液がどろどろになる、というのは、決して食事や運動などだけではなかったのです。偏った栄養や食事、運動不足…気になる人も多いでしょうがその前に、たばこを吸っているならまず止めてみませんか?

吉見逸郎

参考文献

  1. SGR2004