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虫歯は、細菌が糖質をもとに作り出す、酸が歯を溶かすことで生じます。唾液は酸を中性に近づけたり、溶けかけた歯を修復する役割を持ちます。多くの虫歯は、歯の間や奥歯の溝から発生し、特に溝の細菌は歯みがきでは取り除けません。そのため、歯みがきをしていれば虫歯が防げるという常識は現在では正しくないことが分かっています。さらに、生物医学的原因だけでなく、社会環境・生活環境の重要性が認識されつつあります。
学校健診で最も多い疾病がむし歯です。生えてから間もない歯は弱く、また甘い飲食物を好むことが多ので子供は虫歯になりやすいことで知られます。年齢と共に虫歯は増加します。子供の虫歯は減少を続けていますが、地域格差が存在します。虫歯が減った現在、子供の虫歯の多くは奥歯の溝から発生します。この予防には溝を埋めるシーラントや、フッ化物の利用が有効です。また、地域格差の解消には、地域の社会環境・生活環境を改善することが大切です。
成人の9割以上が虫歯の罹患経験を有しています。40歳以上の年齢においても、常に約4割は虫歯が原因で歯が抜かれています。大人の虫歯はその特徴から、歯の根面の虫歯、歯の詰め物の裏側の虫歯、子供と同様の虫歯に分けられます。成人期には、歯周病対策だけでなく虫歯への対策も重要です。
むし歯が歯の表層に限られる場合は、削らず再石灰化を期待します。むし歯が大きくなると、歯を削り、詰め物やかぶせものをつける治療を行います。むし歯がさらに進行して歯髄(しずい)に達すると、歯髄を除去(抜髄(ばつずい))する必要があります。その場合は、多くは、土台をたててかぶせ物をする治療が必要になります。
むし歯を作る要因は、歯の質、細菌(むし歯原因菌)、食物(砂糖)の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形で、むし歯予防法は、フッ化物応用とシーラント、歯みがきの励行、糖分を含む食品の摂取頻度の制限にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で、地域で、保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが必要です。
フッ化物利用は、歯質のむし歯抵抗性(耐酸性の獲得、結晶性の向上、再石灰化の促進)を高めて、むし歯を予防する方法です。全身応用(経口的に摂取されたフッ化物を歯の形成期にエナメル質に作用させる)と、局所応用(フッ化物を直接歯面に作用させる)があります。有効性・安全性に関する証拠が確認されています。
フッ化物(モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ)を含む歯磨き剤です。幼児から高齢者まで生涯を通じて家庭で利用できる身近なフッ化物応用で、世界で最も利用人口が多い方法です。日本の市場占有率は、欧米にかなり遅れましたが、2004年88%に達しています。
比較的高濃度のフッ化物溶液やゲル(ジェル)を歯科医師、歯科衛生士が歯面に塗布する方法です。乳歯むし歯の予防として1歳児から、また、成人では根面むし歯の予防として実施されています。矯正治療中の患者さんや唾液流量の低下している人など、ハイリスクの人に他のフッ化物応用法に加えて実施されています。
一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を用いて、1分間ブクブクうがいを行う方法で、永久歯のむし歯予防手段として有効です。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し中学生まで続けます。保育園・幼稚園・小中学校で、集団で実施されていますが、個人的に家庭で行う方法もあります。
水道水フロリデーションとは、虫歯を予防するために、飲料水中のフッ化物濃度を、歯のフッ素症の流行がなく虫歯の発生を大きく抑制する適正量(約1ppm)まで調整するという自然を模倣した方法です。現状の虫歯有病状況を半分以下にするという効果が確認されており、安全性と効果については専門機関が保証しています。
シーラントは、奥歯の溝を物理的に封鎖したり、シーラント材の中に含まれるフッ化物により再石灰化作用を促進するむし歯予防法です。4年以上で約60%のむし歯予防効果が認められ、特にフッ化物応用との併用によりむし歯予防効果はさらに増加します。シーラントはむし歯発症リスクの高い歯に行うと特に有効です。
砂糖は虫歯のリスク・ファクターのひとつであり、摂取方法によって虫歯の有病状況に影響を与えるため、甘味(砂糖)摂取の総量を減らすこと、あるいはその摂取回数を減らすよう指導するべきです。ただ、そのように指導しても明瞭な予防効果を得ることは困難であるため、他の予防手段を併用することが必要です。
スクロースに替わってう蝕を誘発しにくい代用甘味料を上手に利用することがう蝕予防にとって重要です。多数の代用甘味料が開発されており、厚労省が許可している特定保健用食品や日本トゥースフレンドリー協会認定食品に利用されています。う蝕予防のため特に食間にはこれらの機能性食品の摂取を心掛け、メリハリのある食習慣をつけることが肝要です。
卒乳(断乳)の時期を逃したまま、就寝時に母乳を与えること、ミルクや糖質を含む飲料を哺乳びんに入れて飲ませることは、特有の虫歯の症状を引き起こしますが、虫歯の発症には多重の要因が関与しているため、卒乳(断乳)に関する適切な対応と虫歯予防の実践が求められます。
歯みがきは、歯面からプラークを機械的に除去することを目的とした予防法です。これには、セルフケアと、プロフェッショナルケアがあります。セルフケアによって、プラークを毎日完全に除去することは現実には不可能と考えられます。むし歯予防を成功させるには、セルフケアとともに他のむし歯予防法を組み合わせることが必要です。
歯の中には、「歯髄」と呼ばれる神経や血管を含む組織があります。
虫歯や外傷によって、歯髄が感染したり、壊死(えし)*したりしてしまうと、歯髄を取り除く根管治療が必要になります。
また、一度根管治療を行なったにもかかわらず、再び根管が感染してしまったり、感染が残っていたりする場合は、再根管治療が必要となります。
*壊死(えし)…組織や細胞が死ぬこと。歯髄壊死とは歯髄が死んでしまうこと。
