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むし歯の予防法(総論)

むし歯を作る要因は、歯の質・細菌(むし歯原因菌)・食物(砂糖)の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形でむし歯予防法は、フッ化物応用とシーラント・歯みがきの励行・糖分を含む食品の摂取頻度の制限にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で・地域で・保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが必要です。

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むし歯の発生と原因

むし歯の発生と原因

歯ではむし歯原因菌が砂糖を分解して非水溶性のグルカンを生成し、この非水溶性のグルカンが歯の表面に強固に付着します。その凝集体がプラークです。プラーク中のむし歯原因菌が糖類を分解して産出した酸によって、歯の表面では歯を構成しているカルシウムなどミネラル成分が溶け出る現象(脱灰)と、歯から溶け出したミネラルを再沈着させる修復現象(再石灰化)の繰り返しが絶えず生じています。この脱灰と再石灰化のバランスが崩れて脱灰が優勢になったとき、むし歯が発生します。

まとめると図に示したように、むし歯を作る要因は疫学的に「歯の質」「細菌(むし歯原因菌)」「食物(砂糖)」の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形で、むし歯予防法は「フッ化物応用とシーラント」「歯みがきの励行」「糖分を含む食品の摂取頻度の制限」にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で・地域で・保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが最も効果的です。

むし歯の予防法

従来から行われてきた「歯みがきの励行」「糖分を含む食品の摂取頻度の制限」という方法は、正しく実施されればある程度の効果は期待できるものと思われます。しかしこれらの方法は各個人の生活の中で、その意志と努力にゆだねられるものであり、現実的には広範囲の人々の理想的な実践を期待することは困難です。実際に地域での実践例をみても広く住民を対象とする予防方法としては効果が不十分とされています。
一方でフッ化物の利用によるむし歯予防法は、再石灰化を促進し歯質のむし歯に対する抵抗性の強化を目的とした方法です。様々な疾患の予防法と同じく、疾病に対する身体の抵抗力を高める方法(宿主要因対策)として最も重要と考えられています。フッ化物を集団的に用いた場合、その方法は簡単で費用対効果に優れており多くの人々が参加できるなど、公衆衛生的な特性を備えています。公衆衛生的な手法でフッ化物を応用すれば高いむし歯予防効果が期待できます。

(最終更新日:2019年8月8日)

葭原 明弘

葭原 明弘 よしはら あきひろ

新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔保健学分野 教授

1987年新潟大学歯学部卒業。2001新潟大学大学院医歯学総合研究科助教授、07年新潟大学大学院医歯学総合研究科准教授、11年新潟大学大学院医歯学総合研究科教授、12年から新潟大学歯学部口腔生命福祉学科長。予防歯科学の臨床および研究に併せ地域歯科保健活動にも積極的に参加している。