不眠症
不眠症とは、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠の原因はストレス、こころやからだの病気、クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。
不眠症って何?
誰しも「眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠体験をもっています。心配事がある時、試験前日、旅行先などさまざまな原因がありますが、通常は数日から数週のうちにまた眠れるようになります。しかし、時には不眠が改善せず1ヶ月以上にわたって続く場合があります。
不眠が続くと日中にさまざまな不調が出現するようになります。倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振など多岐にわたります。
このように、1)長期間にわたり夜間の不眠が続き、2)日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する、この二つが認められたとき不眠症と診断されます。
不眠症のタイプ
不眠症は4つのタイプに分けられます。寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない「熟眠障害」です。
不眠症は国民病
日本人を対象にした調査によれば、5人に一人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しています。加齢とともに不眠は増加します。60歳以上の方では約3人に一人が睡眠問題で悩んでいます。そのため、通院している方の20人に1人が不眠のため睡眠薬を服用しています。不眠症は特殊な病気ではありません。よくある普通の病気なのです。
睡眠時間は問題ではない
睡眠時間には個人差があります。日本人の睡眠時間は平均して7時間程度ですが、3時間ほどの睡眠で間に合っている人もいれば、10時間ほど眠らないと寝足りない人までさまざまです。また、健康な人でも年齢とともに中途覚醒や早朝覚醒が増えてきます。「若い頃はもっと眠れたのに」は禁物です。
最初にも書きましたが、不眠症は不眠そのものだけではなく「日中に不調が出現する」ことが問題なのです。眠りが浅く感じられても昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。睡眠時間が短いことや目覚め回数にこだわりすぎないことが大事です。
不眠の原因
不眠症は一つの病気ではありません。大部分の不眠症にはそれぞれ原因があり対処法も異なります。主な不眠の原因とその対処法について簡単に表1にまとめたので参考にしてください。
特に、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害、うつ病による不眠や過眠などは専門施設での検査と診断が必要です。これらの特殊な睡眠障害にはそれぞれの治療法があり、通常の睡眠薬では治りません。これらの睡眠障害が疑われる場合には、日本睡眠学会(http://jssr.jp/)の睡眠医療認定医や精神科医へのご相談をお薦めします。

不眠への対処法
不眠対処の第一歩は先に挙げたようなさまざまな不眠の原因を診断し、取り除くことです。それに加えて自分流の安眠法を工夫することが効果的です。安眠のためのコツを表2にまとめした。また、「快眠のためのテクニック」「快眠をもたらす生活習慣」も参考にしてください。

不眠恐怖の悪循環を断つ
眠れない日が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、「早く眠らなければ…」と焦れば焦るほど目が冴えてしまう。不眠症の方が共通して経験する不安です。「一過性で終わるはずだった不眠が慢性化して不眠症になる」、その背景にはこのような「不眠恐怖」があります。不眠が続くうちに寝床に向かうだけで緊張してしまい、夜になるのが憂鬱になってきます。そのようなときは「どうせいつかは眠くなるのだから、眠くなるまで起きていよう」くらいに割り切ったほうが好結果をもたらします。実際、「眠れないのに我慢して無理に寝床にいる」と不眠が悪化することが分かっています。常識的な範囲内でベッドで休む時間を決めておき、眠れなければベッドから出る、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。前の晩に眠れなくて仕事に集中できない、眠くてしようがないという場合には、昼休みを利用して昼寝をするといいでしょう。10-15分で十分です。たとえ短時間でも脳の疲労をとるのに効果があります。
専門医に相談することを躊躇しない
どうしても不眠が治らないときには専門医に相談をしましょう。不眠症は精神科や心療内科で扱います。精神科へ行くのは気が重いという方はまずかかりつけ医に相談してみるといいでしょう。病院を受診して不眠について相談するだけでも不眠恐怖は和らぎます。大切なのは、眠れないことを一人でくよくよ考え込まないこと。その心配する気持ちそのものが、不眠を悪化させるだけではなく、こころ(うつなど)やからだ(ストレス性疾患など)に悪影響を与えてしまうということです。
睡眠薬は怖いクスリ?
答えはNO!です。現在の不眠治療は睡眠薬を用いた薬物療法が中心です。睡眠薬は一度使い始めると手放せなくなり、次第に量が増えていくので副作用が怖い。そう思い込んでいる方が多いようですが、最近の睡眠薬はそういう心配はありません。かつて用いられていた睡眠薬は効果が強力な反面、副作用も強く安全性に問題がありました。しかし、現在広く使われている睡眠薬は不安や緊張、興奮をやわらげて眠りに導くので自然に近い眠りが得られ、副作用も少なく安心して使えます。ただし、長期にわたって漫然と使い続けるのはよくありません。医師の指導の元に適切に使用することが大事です。
最近、ドラッグストアで購入できる市販の睡眠薬が売られています。これはアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので、あくまでも短期間の使用に限られています。不眠症に対する治療効果は確かめられていませんので、不眠症の方はこれら市販の睡眠薬を長期に用いてはなりません。
(独) 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理部
参考文献
- 三島和夫: 不眠症. ガイドライン外来診療2006.泉孝英編. 東京, 日経メディカル開発, 2006, pp.296-302.
- 三島和夫: 不眠症:内科疾患および精神疾患に伴う不眠. 精神科臨床ニューアプローチ8:睡眠障害・物質関連障害.上島国利編. 東京, メディカルビュー社, 2006, pp.84-95.
- (独) 国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所・精神生理部)
http://www.ncnp.go.jp/nimh/seiri/
