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安全かつ効果的に「足腰」を鍛える方法

強い足腰は活動的な日常生活をおくるうえで非常に重要です。お勧めのトレーニング法は椅子から立ち上がって座る「椅子スクワット」です。膝への負担が小さく安全に効果的に足腰を鍛えることができます。また足を前方に振りだす筋力を鍛える腿あげ運動も合わせて行うとよいでしょう。

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立ったり歩いたりといった体を支える日常動作の基盤となる動作は主に下肢の筋肉によって行います。ですから強い「足腰」は活動的な日常生活をおくる上で非常に重要となります。強い足腰を作るためのトレーニング方法としてお勧めなのが、座って立ち上がる動作を繰り返し行うスクワットというレジスタンス運動です。立ちあがる動作では膝関節を伸展させる太腿前の大腿四頭筋や股関節を伸展させる(大腿部を後方に振る動作)お尻の大臀筋、太腿裏のハムストリングスなどの下肢全体の筋肉をしっかり鍛えることができます。また胸を張って上体をしっかり支えた姿勢で行いますので、腹筋群・背筋群の強化にも効果があります。

ただしスクワットにはフォームによっては膝関節を痛めやすいという問題があります。上体がまっすぐに起きて膝が前に出るフォームは、膝伸展筋の大腿四頭筋を鍛える効果的な方法ですが、膝傷害の危険性という点ではあまり勧められません。構造上膝関節が脆弱となる膝が深く屈曲した状態のときに、膝関節にとても強い負荷がかかるフォームだからです。
膝を痛めないように安全にスクワットを行うためには、お尻を後ろに引いて上体をやや前傾し、膝が前に出ないフォームで行う必要があります。高齢者向けの運動処方として椅子から立ち上がって座る動作を繰り返す「椅子スクワット」がよく行われます。椅子スクワットでは、椅子に座るためにお尻を引いて上体を前頃したフォームになりますので、自然に膝を痛めずに安全に行えるフォームになります。またしゃがみ込みから立ち上がり動作に移行する「切り返し」動作での劇力(強くて瞬間的に加わる力)が加わりません。しゃがみ込みが深くなりすぎることがないことも安全性という点で優れています。

歩行動作等では地面を蹴りだす筋肉だけでなく、足を前に振りだす働きをする筋肉もまた重要となります。太腿を前に振りだす下腹の深部にある腸腰筋(大腰筋と腸骨筋の2つを合わせて腸腰筋という)、つま先をあげるすねにある前脛骨筋などがその役割を担います。これらの筋肉が発達しているほど、歩幅が広く歩行速度が速くなること、またしっかりと足を振り出せることにより転倒のリスクが低減することが分かっています。これらの筋肉を効果的に鍛える方法として、立位で太腿を交互に引き上げる腿あげ運動や椅子に座ってつま先を上に挙げるトゥーレイズなどを行うとよいでしょう。またこれらの足腰を鍛えるトレーニングを行うことも大切ですが、なによりも活動的に日常から体を動かして普段から足腰をよく使ってあげることが大切です。

谷本 道哉

谷本 道哉 たにもと みちや

順天堂大学大学院 スポーツ健康科学研究科 先任准教授

静岡県出身。スポーツ、トレーニングの生理学、バイオメカニクスの研究者。NHK「みんなで筋肉体操」監修など、研究内容をマスメディア情報発信の形で社会に多く還元している。

参考文献

  1. 石井直方
    中高年から足腰力をつける本
    主婦と生活社
  2. 谷本道哉
    トレーニングのホントを知りたい
    ベースボールマガジン社