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松下 幸生

松下 幸生 まつした さちお

独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 院長

担当カテゴリ: 飲酒

1987年慶応義塾大学卒業、同年同大学精神神経科学教室入局。88年より国立療養所久里浜病院(現・久里浜医療センター)勤務。2011年より副院長、13年より同センター認知症疾患医療センター長、2022年より現職。専門は、アルコール依存症、ギャンブル依存症、認知症など。

アルコール依存症と遺伝

アルコール依存症の原因に遺伝が関係することは確かです。特にアルコールを分解する酵素の遺伝子による違いが、依存症のなりやすさに強く影響することが知られています。さらに、最近では環境による影響の受けやすさに遺伝が関係していることがわかっています。しかし具体的な遺伝子については十分にはわかっていません。

アルコール依存症の危険因子

依存症の危険因子には「1. 女性の方が男性より短い期間で依存症になる」「2. 未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい」「3.遺伝や家庭環境が危険性を高める」「4.家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる」「5.うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める」といったことが知られています。

アルコールの作用

アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり会話を増やしたりする効果がありますが、大量になると麻酔薬のような効果をもたらし、運動機能を麻痺させたり意識障害の原因になります。その他、少量のアルコールは循環器疾患の予防になったりHDLコレステロールを増加させたりします。

アルコールと認知症

アルコール依存症および大量飲酒者には脳萎縮が高い割合でみられること、大量に飲酒したりアルコールを乱用した経験のある人では認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。一方で少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります。

アルコールとうつ、自殺

アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症にうつ症状が見られる場合やうつ病が先で後から依存症になる場合などいくつかのパターンに分かれます。アルコールと自殺も強い関係があり、自殺した人のうち1/3の割合で直前の飲酒が認められます。



開示すべきCOIはありません。