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アルコールとすい臓病

すい臓病には急性すい炎と慢性すい炎および慢性すい炎から起こる糖尿病があります。飲みすぎる人がすべてすい臓病になるわけではありませんが、すい臓病の原因としてアルコールの飲みすぎが多くなっています。特に慢性すい炎の状態ではお酒がやめられないアルコール依存症になっている場合が多く見られます。したがって常習飲酒者で、もし慢性すい炎の診断を受けたら、断酒をするべくアルコール依存症治療の専門病院への受診をお勧めします。

1. はじめに

 すい臓は胃の後ろ側で背中に近いところに帯状に分布しています。すい臓の役目は外分泌機能と内分泌機能があります。外分泌機能としては、すい臓から腸に消化酵素(たんぱく質脂質糖質を消化する酵素)を分泌し食物を消化することにより栄養分の吸収を補助したり、内分泌機能としてはすい臓から血管内にインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血液中の糖分の調節を行なったりしています。
すい臓病には急性すい炎と慢性すい炎および慢性すい炎から起こる糖尿病があります。すい臓病の原因として、アルコールの飲みすぎのほか、胆石や、自己免疫疾患などがありますが、男性においてはアルコールの飲みすぎが最も多く、急性すい炎の約半数、慢性すい炎の約80%弱となっています。
検査では膵臓から分泌される消化酵素としてのアミラーゼ(炭水化物を消化)、リパーゼ(脂肪を消化)、トリプシン(たんぱく質を消化)などが血液や尿中に漏れ出てきているかを見ます。

2. いろいろなすい臓病

1) 急性すい炎
急性膵炎の症状は病気の重症度によって異なりますが、典型例では上腹部(お臍の上の辺り)の激しい痛みで始まり、次第に痛みが強くなり数時間後にピークとなります。また上腹部の背中側の痛み(背部痛)も比較的特徴的な症状です。痛みと同時に吐き気や嘔吐を伴うことが多く見られます。この他、食欲不振、発熱、腹部の張った感じ、軟便や下痢もみられることがありますが、全く症状の無い場合もあります。重症の膵炎では上記の症状の他、ショック症状として意識の低下、血圧の低下、頻脈、チアノーゼなどが見られ、死亡する場合もある恐ろしい病気です。治療としては飲食を禁止し、薬物療法としての鎮痛剤、たんぱく分解酵素阻害剤、輸液などの投与、重症では抗生物質の投与、外科治療なども行なわれます。
病院で治療を受け治癒した後に、再び過量の飲酒を続けていると何回も発作を繰り返し、その結果すい臓が破壊され慢性膵炎となります。

2) 慢性すい炎
慢性すい炎ではすい臓の線維化や、外分泌(膵臓から腸に消化酵素を分泌)や内分泌(膵臓から血管にホルモンを分泌)の機能低下が起こります。慢性すい炎の症状として急性すい炎の症状のほか、外分泌機能の低下による体重減少、脂肪便(便が水面に油のように広がる)、食欲低下、全身倦怠感などの症状や、内分泌としてのインスリンの分泌機能低下による糖尿病となり、その結果としての口渇、多尿なども見られることがあります。慢性膵炎の診断には、a) 膵臓内に石が見られること、b) 膵臓から消化液を運ぶ管(膵管)の不規則な拡張が見られること、c) 膵臓の外分泌(膵臓から腸に消化酵素を分泌する)機能が低下することなどが用いられます。検査として腹部超音波検査や腹部CT検査、ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)検査、MRCP (磁気共鳴胆膵管画像)検査、それに外分泌機能を調べる検査としてPFD試験があります。治療法として腹痛の治療には痛み止めを、再発・進行予防にはたんぱく分解酵素阻害剤を、膵臓の外分泌機能の補充には消化酵素薬を投与します。内分泌機能低下である糖尿病の状態ではインスリンの治療が必要となります。

3. 終わりに

 アルコール性のすい炎では、アルコールの飲みすぎが原因となりますから、その予防には適正な飲酒(1日に2ドリンク以下すなわち日本酒なら1合以下、あるいはビールなら中ビン1本以下、あるいは焼酎なら200mLのコップ半分以下)や、バランスの良い食事を腹八分目に頂くことが大切です。またアルコール性急性すい炎になった人の中には慢性すい炎になっている人がいることが考えられます。慢性すい炎の状態では、アルコール性肝炎と同様お酒がやめられないアルコール依存症になっている場合が多く、特に糖尿病になっている場合で断酒ができない場合には予後不良となりますので、アルコール性慢性すい炎の診断を受けたら、断酒をするべくアルコールの専門病院への受診をお勧めします。

丸山勝也

参考文献

  1. 丸山勝也. 肝臓だけを心配しているあなたへ(2), 飲酒は膵臓にも負担をかけている.食生活 94(12): 91-95, 2000.
  2. 丸山勝也. アルコールと健康障害. 橋本信也(編)現代の養生訓―未病を治す―, pp.130-135, 中央法規出版, 東京, 2008.